この記事ではミオグロビンとミオスタチンについて私なりにまとめています。ご興味のある方は「続きを読む」よりどうぞ。
※当記事作成日時:2019-12-18
ミオグロビンとは?
ミオグロビンは筋肉に豊富に存在する蛋白質の一種であり、酸素を一時的に蓄積する役割があると言われています。特に運動時、筋肉では酸素の必要量が多くなります。一般的に酸素を運ぶのは赤血球の中にあるヘモグロビンですが、実は運動中にはヘモグロビンによる酸素の供給では追いつかない事があります。そこで、ヘモグロビンによって供給された酸素を、あらかじめミオグロビンに貯蔵しておき、大量に酸素が必要になった時、このミオグロビンを利用して酸素を供給します。これによって全力に近いような運動を行った時、安定的に酸素を供給する事ができます。
尚、ミオグロビンは人間以外の動物にも含まれており、肉や魚が赤いのは主にこのミオグロビンによるものです。特に陸上動物では持久的な運動を行う事が多い草食動物において、この赤身がよく見られます。例えば牛、豚、鶏、馬などです。また魚の場合も同じで、長時間泳ぎ続けるような魚でもこの赤身が見られます。例えばマグロやカツオなどです。一方、瞬発的に泳ぐような魚の場合、このミオグロビンの量が減ります。このためタイ、タラ、フグなどのような「白身魚」になるのです。例外的に白身魚の中には身が赤いサケもありますが、サケは甲殻類に含まれるアスタキサンチンを取り込む事で赤くなっているだけで、元々の身の色は白いです。
ちなみにミオグロビンやヘモグロビンに含まれる色素は実は人体にとって有害で、それだけが大量に存在する場合、臓器に大きな負担をかけます。例えばミオグロビンが大量に壊れるような事が起きた場合、それが腎臓に毒性をもたらし、場合によっては死亡する事もあります。特に筋肉が強い圧迫を受けたり、筋肉に大きな損傷を受けたり、あるいは筋肉が壊れるほどの激しい運動を行った後、それらのストレスからの開放時に起こる事があり、「クラッシュ症候群(挫滅症候群)」と呼ばれています。実は地震大国及び自動車大国であるこの日本では、意外と遭遇しやすい病気の一つなのです。
ミオスタチンとは?
ミオスタチンは遺伝子の一種であり、筋肉の細胞の成長を制御する役割があると言われています。実はこれによって筋肉が過度に成長する事を防いでいると言われており、これが強く活性化してしまうと筋肉が分解されてしまいます。よって筋肉を効率良く大きくしていくためには、このミオスタチンの働きを抑える事が重要になります。
このミオスタチンの働きを抑えるためには「高強度のウェイトトレーニングで筋肉に大きなストレスを与える(筋肉の成長が必要な状態にするという事)」「抗酸化(紫外線対策、内外のストレス対策、加齢等による細胞の老化対策、抗酸化物質の摂取など)」「節制した食習慣(運動量に見合った食事内容と1回の量、そして頻度の管理)」などが重要になると思われます。まぁこれらの事はただ当たり前の事を言っているだけですが、それらの内容及び質がトレーニングの効率化に繋がるという事です。
一方、ミオスタチンはそのように遺伝子であり、親からの遺伝による影響を強く受けます。人によって「筋肉がつきやすい・つきにくい」という体質がありますが、それにはこのミオスタチンが大きく関係していると言われています。ただしそのように全てが遺伝子で決まってしまう訳ではなく、筋肉が付きづらいのは単に「ミオスタチンを抑制できないような生活」をしているだけという可能性もあります。特に遺伝子というのは見た目に分かりやすい形で全て現れる訳ではありません。例え両親や親族が皆痩せ型でも、貴方がそうであるとは限らない訳です。見た目だけで「自分は筋肉がつきにくい」などと考える必要は全くないのです。
ちなみに遺伝子的にこのミオスタチンに異常があり、遺伝子として上手く機能しなかったり、遺伝子そのものがない場合もあります。その場合、幼少期から大人並み、あるいはボディビルダー並みに筋肉が成長しやすくなる事があり、それを「ミオスタチン関連筋肉肥大」と言います。
世界でも数百人程度しかいないと言われる非常に珍しい病気のため、研究はあまり進んでいませんが、ミオスタチンの抑制によって筋肉が大きくなれば効率良く筋力が上がるため、様々な病気の治療や老化への対策として応用できる可能性があります。また技術的にはまだできませんが、理論的にはスポーツ選手のパフォーマンス向上のためのドーピングの手段として利用する事も可能と思われます。一方、人間以外の動物でも稀に見られる事があります。特に食用にされる動物では、敢えてそのような品種改良する事で肉質を上げるという事も研究されているそうです。