「全力運動時の運動能力」に関する様々な用語まとめ

この記事では全力運動時の運動能力に関わる用語、特に「LT(AT)」「OBLA」「MHR」「Vo2max」について私なりにまとめています。ご興味のある方は下記「続きを読む」よりどうぞ。

(記事作成日時:2017/4/19、最終更新日時:2019/12/17)

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●乳酸性作業閾値とは

無酸素運動の強度を上げていくと、グリコーゲンが消費された事によって乳酸ができます。その乳酸が急激に溜まり始める最初のポイントの事を「乳酸性作業閾値(Lactate Threshold、通称:LT)」または「無酸素性作業閾値(Ananerobic Threshold、通称:AT)」と呼びます。この記事では「AT」の方を使う事にします。

ATに至る以前でもグリコーゲンが消費されれば乳酸はできます。しかし乳酸ができる度に除去する事ができ、同じ場所に蓄積する事はありません。しかしその除去が追いつかなくなると、筋肉内に大量の乳酸が溜まり、それによって周囲が酸性に偏ります。するとそれを元に戻そうとして水分、すなわち血液の量が増え、それによって筋肉が膨らみ、可動域が制限されます。またグリコーゲンが消費されたという事は、筋肉を動かすエネルギーが減ったという事であり、筋肉が動かしづらくなり、疲労感を感じます。その最初のポイントこそがこのATです。

特に「乳酸が溜まり始める」という事は「糖がエネルギーとして消費されている」という事であり、それは「無酸素運動が正常に行われている証拠」と言えます。つまりATは無酸素運動における強度設定の目安にする事ができ、AT以上の運動強度に設定する事で、乳酸を溜める事を目的としたトレーニングを行う事ができます。一方、有酸素運動を行う場合、逆にATのポイント以下にまで運動強度を下げ、「乳酸をなるべく出さないようなペース」で走る事で、より長時間の運動が可能になります。こちらもその運動強度の目安にする事ができます。

尚、トレーニングを続けていくと、筋肥大やそれに伴う筋力の増加、更にはグリコーゲンの消費・合成効率が上がり、それに伴ってATのポイントも上昇します。そうしてATが上がれば、乳酸が溜まり始めるのを遅れるため、無酸素運動時のパフォーマンスを上げる事ができます。一方、それとは別に「無駄な筋力を使わないように体を動かす」事で、意図的に乳酸の蓄積を遅らせる、すなわちATに至らないようにする事もできます。特に競技スポーツにおいては終盤まで体力を残しておく必要があり、エネルギーを節約しながら運動を続ける事のできる「体の使い方」の習得は不可欠です。例えばマラソンなどでは足の運び方や腕の振り方など「走る技術」を向上させる事で、余計な力を使わず、終盤まで疲労感を感じずに走り続ける事ができるようになります。



●血中乳酸蓄積開始点とは

ATのポイントを更に超え、血中の乳酸の濃度が「4mmol/L」となるようなポイントの事を「血中乳酸蓄積開始点(通称OBLA)」と呼びます。「mmol/L」とは「ミリモル・パー・リットル」と読み、これは濃度を表す単位の事で、1リットル中に溶けた物質量(4ミリモル)を意味しています。

これは簡単に言えば「乳酸が血液中に溜まった状態」の事であり、この状態になると、前述した乳酸の蓄積による作用から、可動域が大きく制限されます。また乳酸がたくさんできたという事は、既に筋肉内のグリコーゲンも大量に消費されています。そのため筋肉の動きは非常に鈍くなり、筋力も低下、それ以上運動を続ける事は難しくなっています。その状態になる最初のポイントこそがこのOBLAです。

一旦このOBLAに至ってしまうと、運動中に回復させるのは難しいため、再び全力での運動を行うためには十分な休養が必要になります。そのため、その日の終盤までパフォーマンスを維持するためには、できるだけOBLAに至らせないようなペース配分が重要になります。一方、トレーニングを行って前述のATのポイントが上昇すると、このOBLAに至るまでの時間も遅らせる事ができます。またOBLAの状態を意図的に作り、その状態で敢えて運動を続ける事によって、乳酸が溜まった際に起こる体の機能(乳酸を処理する能力等)を向上させる事ができます。OBLAはそのようなトレーニングを行う際の目安になります。



●最大心拍数とは

激しい運動を行った際、心臓が脈を打つ事ができる限界の数の事を「最大心拍数(Maximum Heart Rate:MHR)」と呼びます。一般的な成人の場合、全力に近い強度で運動を行った際のMHRは「220−年齢」前後と言われています。例えば20歳なら200前後、60歳なら160前後になります。ちなみに一般的な成人の安静時の心拍数は60〜70程度と言われています。

一方、トップレベルのスポーツ選手、特にマラソンランナーの場合、平常時の脈拍が30〜40になる場合があります。心臓の筋肉が強くなると、1回の脈動で送る事のできる血液の量が増えるため、それだけ平常時の心拍数が減るのです。またそうして平常時の心拍数が減るほど、MHRとの差が大きくなり、MHRに至るまでの時間を遅らせる事ができます。このためMHRに至るような高い強度の運動を行う事で、「全力に近い強度での運動」におけるパフォーマンス及び持続時間を大きく向上させる事ができます。MHRはそのようなトレーニングを行う際の目安になります。

尚、MHRは年齢を重ねる度に下がっていくと言われています。もちろんそうしてトレーニングを行う事で一時的に最大心拍数を上げたり、あるいはトレーニングの継続によって、加齢による最大心拍数の下がり方を緩やかにする事はできますが、完全に抑える事はできません。逆に言うと年齢が若い人ほど最大心拍数は高いという事です。子どもは大人よりも歩幅が小さく筋力がないため、全力で走れば大人の方が速いですが、全力に近いペースで行う事のできる運動の持続時間は実は子どもの方が長いのです。



●最大酸素摂取量とは

1時間当たりに取り込む事のできる酸素の最大量の事を、最大酸素摂取量、通称「Vo2max(ブイ・オーツー・マックス:Vはボリュームの事)」と呼びます。Vo2maxが上がれば、当然全力に近い強度の運動を行った時、そのパフォーマンスや持続時間が大きく向上します。

例えば1回の呼吸で吸う事のできる空気の量が増加すれば、当然より多くの空気を肺へ送る事ができます。これにより血液中に溶ける酸素の量を増やす事ができ、Vo2maxは上がります。また肺に流入する血液の量が増える事で、その血液に溶ける酸素の量が多くなるので、それによってもVo2maxは上がります。そして単純に心臓の筋肉が強くなる事で、全身へ送る事のできる血液の量が増えるため、それによってもVo2maxは上がります。

その他、酸素を運ぶ赤血球(ヘモグロビン)量が増えたり、酸素を利用してエネルギーを生み出すミトコンドリアの能力が活性化されたり、毛細血管の数が増えたり、酸素を必要としている細胞の数が増えたり、あるいは単純に強度の高い運動を行って酸素が大量に必要な状態を作り出したり、元々酸素が少ない環境に身を置くなどによっても、Vo2maxは増やす事ができます。



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