有酸素運動とは?その特性について簡単に理解しよう

単に「運動」と言っても様々な種類がありますが、運動は特に「運動を行う際に起こる体の反応」によって大きく2つの種類に分ける事ができます。それが「無酸素運動」と「有酸素運動」です。この記事ではその内の「有酸素運動」について私なりにまとめています。その特性を理解する事で、トレーニングを効率化させると共に、「運動」という言葉に対する考え方を変えていきましょう。ご興味のある方は下記「続きを読む」よりどうぞ。

(当記事作成日時:2013-10-11、最終更新日時:2019-11-29)

★当記事の目次

ここでは当記事内の章をリスト化しています。クリックする事で直接その場所へ飛ぶ事ができます。また戻りたい場合には各章の一番下にある「当記事の目次まで戻る」をクリックする事で再びこの場所に戻ってくる事ができます。



★有酸素運動の仕組みについて簡単に

筋肉内にある細胞に限らず、あらゆる細胞は「ATP(アデノシン三リン酸)」をエネルギーにして活動しています。特にATPはそのように「リン酸の分子」が複数結合した形になっており、一つ一つのリン酸の分子が大きなエネルギーによって結びついています。つまりATPに結合しているリン酸の分子を一つ他所へ受け渡すだけでも、大きなエネルギーを運ぶ事ができる訳です。細胞はそのエネルギーを元に活動する事ができ、ATPにはそうしてエネルギーを運搬する重要な役割があります。

このATPは糖を分解する「解糖系」や、解糖系の代謝物あるいは脂肪酸を分解する「クエン酸回路」などから供給されます。この内、解糖系は酸素を利用せずに機能し、糖を代謝される過程でATPを作って「ピルビン酸」となり、最終的に「アセチルCoA」となる事でクエン酸回路の中に入る事ができます。一方、脂肪酸はそのままの形ではクエン酸回路(ミトコンドリアの内部)に入る事ができません。そのため脂肪酸はATPを消費して一旦形を変えた後、「カルニチン」によって運搬されてミトコンドリアの壁を通過、更にその後「β酸化」により酸素を使って代謝され、同じくアセチルCoAになってからクエン酸回路の中に入ります。

「β酸化」については私自身あまり理解していないので、詳しい説明はしませんが、β酸化及びクエン酸回路内のサイクルは解糖系による代謝よりも遅いため、ATPの供給は少しずつしかできません。一方、糖を代謝する過程(解糖系+クエン酸回路)で得られるATPの量よりも、脂肪酸を代謝する過程(β酸化+クエン酸回路)で得られるATPの方が量が多いです。有酸素運動ではこれを利用し、少しずつATPを供給する事で、持続的な筋肉の運動が可能になっています。供給元となる脂肪酸などのエネルギーが尽きなければ、理論上は半永久的に運動を続ける事ができます(24時間以上のマラソン、100km以上のマラソン等)。

ただしそのように解糖系で得られるアセチルCoAもクエン酸回路内に入る事ができるので、実際の有酸素運動では糖もエネルギーにし、ATPの供給源にする事ができます。また糖を代謝する事では乳酸ができますが、有酸素運動ではこの乳酸もエネルギーにし、ATPの供給源にする事ができます。短時間に大きな筋力を発揮する無酸素運動ではATPの供給が素早く行われる必要がありますが、有酸素運動ではATPの供給は遅くても良いので、様々なエネルギー代謝によって得られるATPを全て利用する事ができます。これも有酸素運動を長時間行う事ができる理由になっています。



●「脂肪を燃やす方法」としては効率が良いとは言えない

有酸素運動は「脂肪を燃やす方法」としてよく知られていますが、脂肪は糖や蛋白質と比べ、それを燃やすために倍以上のエネルギーが必要です。具体的に言えば、糖や蛋白質は1g当たり4kcalですが、脂肪は1g当たり9kcalあります。そのため有酸素運動を行えば確かに脂肪は燃えるのですが、実際には本当に少しずつしか燃やす事ができず、例え正しい実施方法で有酸素運動を行ったとしても、最終的に燃やされる脂肪の総量は決して多くありません。

また長時間の有酸素運動と短時間の有酸素系トレーニング(短時間の内に全力運動と不完全休養を繰り返すインターバルトレーニング等)を比べた時、消費されるエネルギーの量にはそこまで大差がなかったとする実験結果もあるようです。それが正しいならば、有酸素運動を行うにしても、毎日少しずつ行う事が重要であり、脂肪を燃やすためだからと言って、1日何時間もぶっ続けて行う必要はないという事が言えると思います

何より有酸素運動は「長時間続ければ続けるほど良い」訳ではありません。確かに長時間行えば、短時間で終えるよりも脂肪の燃える量は多くなります。しかしあまりに長時間の有酸素運動を続けると、肉体的なストレスによって筋肉が酸化、必要以上に分解されてしまう可能性があります。つまり有酸素運動の実施方法によっては、筋肉が落ち、それに伴って基礎代謝が低下する可能性がある訳です。

それは筋トレのような無酸素運動でも起こる事です。むしろ筋トレでは、運動中の栄養補給、セット数、セット間のインターバルなどを調節する事で、デメリットを最小限に抑えるという事が近年に常識になりつつあります。有酸素運動もあまりに長時間に及ぶとそれが起こる事があり、特に普段から筋トレを行っている場合、それが原因で、元々行っていた筋トレの効率を下げてしまう可能性があるのです。この事から有酸素運動を行う場合、目的を明確し、その目的に応じた実施方法で行う事が重要になるでしょう。



●有酸素運動を行うなら目的を明確にしよう

無酸素運動・有酸素運動に関わらず、運動では筋肉の収縮に伴って熱が生まれ、その熱が周囲の血液を温め、それが全身へ循環する事で体温が上昇します。つまり無酸素運動も有酸素運動もどちらも体温が上昇し、発汗を伴う訳ですが、有酸素運動ではそれが持続的に行われる事で、結果として大量の発汗が行われます。そのため有酸素運動を行う事では体温を調節する機能の向上、末梢にある細胞の栄養状態の改善、水分代謝の向上などの作用が期待できます。特に四肢においては浮腫や冷え性などの改善効果も期待されます。前述したように脂肪を燃やす目的で行うのはあまりオススメしませんが、これらを目的にして行うのであれば良い方法になるでしょう。

一方、発汗は体温を下げるために行われている訳で、水分がなければなりません。水分補給を怠った状態で有酸素運動を行っても、効率良く発汗できないばかりか、代謝が上手く行われず、自律神経系にダメージを与えてしまう可能性があります。また汗には水溶性ビタミンや各種ミネラル(カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等)も含まれており、排出される汗の量が増えるほど、それらの栄養素が失われる量も増えます。その補給を怠った状態で無理に有酸素運動を行えば、当然健康を害してしまうでしょう。それには十分注意しなければなりません。


ちなみに有酸素運動には体重を落とす効果があります。何故なら前述したように脂肪より重い筋肉を落とす事ができるからです。そのため例えば厳密な体重の管理が必要な格闘技やボディビルなんかでは、食事を制限し、摂取エネルギーを減らした上で、敢えて有酸素運動を行い、余分な脂肪・筋肉・水分を全て削ぎ落とす・・・という事を行う場合があります。その場合、有酸素運動を行う意味はあります。

一方、前述のように脂肪だけを落とそうとする場合、有酸素運動だけでは時間がかかりすぎ、時間をかけるほどデメリットが大きくなるので、あまりオススメできません。また汗をかく事をいわゆる「デトックス効果」と言う人もいますが、残念ながら汗に含まれる老廃物は微々たるもの(便の方が圧倒的に効率が良い。ただし便通には食習慣以外にも様々な要素が関係している)なので、それを目的に行う事もオススメしません。



●有酸素運動に対する誤ったイメージを変えよう

有酸素運動に関しては、特に「つらい」「きつい」「楽しくない」などネガティブな印象を持っている人が多いように思います。しかしそれは、普段から運動を行っていない人ほど、「運動を行う際の強度設定」が上手くできていない事が主な原因です。長時間続ける必要があるのに、体を激しく動かすという事だけを考えていたら、脂肪が燃える以前に運動の継続ができません。今の自分の体力をまず知り、それに合わせ、腕の振り・歩幅・足を踏み出すスピードなどを調節しましょう。前述したように正しい有酸素運動を行っていたとしても、脂肪の燃える様は決して多くありません。行うのなら激しさや時間よりも「毎日積み重ねる事」を重視すべきです。

また有酸素運動では、俗に「少なくとも20〜30分以上続けなければ脂肪は燃えない」と言われる事があります。確かに短時間で終えるよりも、長時間行った方が「脂肪が燃える総量」が多くなるのは事実なのですが、正しく有酸素運動が行われていれば、有酸素運動が始まったその時点から脂肪は燃え始めます。つまり「20分以上続けなければ脂肪は燃えない」という明確な根拠は存在しません。20分以上とか30分以上とか言われるのは、前述したように初心者ほどペース配分が上手くなく、体を激しく動かそうとしてしまうからです。

何より有酸素運動の方法は「歩く」「走る」だけではありません。前述のように長時間運動を続ける事ができるような強度設定ができていれば、どのような種類の運動であっても有酸素運動になります。工夫次第でどうにでもなるため、有酸素運動=走る=つらいなどという固定概念は持つべきではありません。



●必ずしも「発汗=脂肪の燃焼」とはならない

例えば半身浴、岩盤浴、砂風呂、サウナなどでも汗をかく事ができ、それに伴って体温調節機能の改善、水分代謝改善、末梢の血流改善などの作用が期待できます。ただしそれらでは運動を全く伴っていないため、脂肪は殆ど燃えていません。そもそもそれらの発汗は、単に周囲の温度が高い事によって起こる体温上昇に伴って起こるものであり、有酸素運動のように筋肉を収縮させた事によって起こるものではありません。このため必ずしも「発汗=脂肪の燃焼」とはならない事には十分な注意が必要です。もちろん前述したように発汗による老廃物の排出も微々たるものです。

何故この話をしたのかというと、その勘違いがある事で、汗をかく行動に固執してしまう人があまり多いからです。当然いくら室温を上げ、厚着をして汗をかいても、大して脂肪は燃えません。それどころか、最低限必要な水分や栄養素の補給が伴っていない場合、大量発汗によって、美容や健康とは真逆の結果をもたらす事さえあります(自律神経系にもダメージ)。その認識は改めるべきでしょう。

これは辛い食べ物(カプサイシン)を食べるのも同じ事です。特に辛い食べ物は、日本人の舌に合わせるため、糖・塩・油を大量に使用している事があります。また辛い食べ物ばかりを食べる事で他の栄養素が疎かになり、全体の栄養バランスが損なわれる事もあります。汗がかけるからと言って、一つの事に固執すべきではありません。




【筋肉や筋トレに関する基礎知識の最新記事】

筋トレの際の重量を計算する計算機(移転済)
筋トレ及び運動に関わるマイナー?な用語集・適当まとめ
ミオグロビンとミオスタチンについて考える
「全力運動時の運動能力」に関する様々な用語まとめ
筋トレ効率化に重要なインスリン感受性(インスリン抵抗性)
目的別〇〇〇〇トレーニングの分類まとめ
筋肉に異なる刺激を与えるための様々な工夫(グリップ・体の使い方等)
筋トレにおける重量・レップ・セット数・インターバル等の決め方まとめ
筋肉の収縮様式について理解しよう
乳酸・パンプアップ・疲労感などのメカニズムについて考える
運動前に行うべきウォーミングアップについて考える
運動後に行うクールダウンの必要性について考える
オーバーユースとオーバートレーニングについて考える
筋トレは毎日続けるべき?効率良く筋肉を鍛える方法
「自動」と「他動」について考える
主働筋と拮抗筋の役割について考える
トレーニングの原理・原則について理解しよう
いわゆる「筋肉痛」と「超回復」について考える
いわゆるインナーマッスルとアウターマッスルについて考える
いわゆる「使える筋肉」と「使えない筋肉」について考える