「運動神経が良い・悪い」について考える(要点のみ)

※当記事作成日時:2019-06-06

「運動神経」とは筋肉を動かす際に働く神経の総称です。脳から送られた命令は電気信号として神経を通り、それが最終的に筋肉へと伝わる事で、腕や足などの筋肉を意識的に収縮させる事ができます。それにより自分の動かしたいように体を動かす事ができます。ただし複数の筋肉を同時に動かすような複雑な動作の場合、全ての筋肉を個別に意識して収縮させている訳ではなく、小脳などが統合的に調節します。そのため実際には経験・記憶・感覚などで収縮させている部分が多くなります。俗に言われる「体で覚える」とはこの事で、それにより頭で考えてから体を動かすよりも素早く体を動かす事ができます。

一方、例えば胃や腸などの臓器にある筋肉を動かすのも、実は運動神経の持つ機能の一つです。特に臓器は腕や足とは違い、全て自律神経によって自動化されているため、自分の意志で動かす事はできません。しかし例えばストレスを感じた時にお腹が緩くなる事があると思いますが、脳の中では接している部分があるため、臓器はその時々の感情の変化などの影響を受ける事があります。よって臓器の活動は直接的には意識できなくても、生活習慣などで間接的にはコントロールする事ができます。


尚、「運動神経が良い」とは、どのような運動でも難なく行う事ができる事を言います。周囲からそのように評される人は、例え初めて行う運動であっても、その場で体の動かし方を学び、あっという間に自分の物にしてしまいます。技術の習得スピードが非常に早いため、普段から運動を行っていない人からすれば、その場ですぐに覚えているように見えます。またそれを繰り返す事では、する事のできるスポーツの種類もどんどん増えていくので、どんなスポーツでも得意なように見えます。そのため「スポーツ万能」と呼ばれる事も多いです。

しかし初めて行う複雑な運動を、いきなりプロレベルで上手くできる人はいません。誰もが必ず段階を経て技術を習得しています。有名選手の映像を何度も見て、記憶に焼き付け、その真似をして実践、上手くできなければ修正して再び実践・・・それをひたすら繰り返しているのです。特に「運動神経が良い」「スポーツ万能」と言われるような人たちは、その「段階を経て覚える」という事を小さい頃から無意識の内に行っており、それによって技術の習得効率を高めています。だからこそ周囲よりも上手くなるのが早いのです。

普段から運動を行っていない人が、いざ新しく何かの運動を行おうとした時、とにかく「体を素早く動かす事」で頭がいっぱいになってしまいます。しかし体の動かし方が分からない状態で、いくら素早く動かそうとしても、体は上手く動いてくれません。例えば膝が動いた後に足首を動かす必要がある場合、足首が先に動いてその後に膝が動いてしまったら、その動作は上手くできませんよね。単に素早く動かす事だけを考えて体を動かそうとすると、そのように各部位の順番がデタラメになったり、タイミングがずれたり、あるいは余計な力が入ったりなど、非常に効率の悪い体の動かし方になります。それでは効率の良い技術の習得はできないでしょう。

一方、普段から運動を行っている人の場合、一旦頭の中でゆっくりとした動作をイメージし、それを自分の体を使って実践、そして実践する度に修正し、再び実践、再び修正・・・そうして少しずつ動作スピードを早めていきます。運動神経が良いと言われるような人たちは、意識的に、あるいは無意識的にも、それをひたすら繰り返す事で技術を習得しているのです。ただし動作のイメージはできても、体の基本的な動かし方を知らなければ、実践して試す事はできません。例えば膝を曲げた状態から伸ばす場合、太ももの筋肉を収縮させる必要があります。しかしそれを頭で考えずに、感覚的にできなければなりません。そのためには野球以外の多種多様な運動の経験も必要です。

特にスポーツでは「瞬間的に起こった、自分が予想していない事に対し、素早く体を反応させる」必要があります。そのためには脳からの命令がスムーズに行われる事はもちろん、そのように頭で考える前に体を動かす必要があるため、あらかじめ腕や足などの基本的な動かし方を覚えている必要があります。つまり反射レベルで素早い動作を行うほど、小さい頃からの運動経験が出る訳です。

「運動神経」と聞くと生まれつきの才能で全てが決まってしまうという印象も強く、実際、確かに、素早い動作ほど遺伝子的な要素が関係します。しかしいくら遺伝子的に優れた神経を持っていても、その神経を使い続けなければ能力は発揮されません。「生まれつきで決まる」と勝手に考え、積み重ねを疎かにする方が、よっぽど運動神経は悪くなってしまうと思います。