「足腰を強くするための走り込み」について考える(要点のみ)

走る

※当記事作成日時:2019-05-31

いわゆる「走り込み」を「長距離走を行う事、または短距離走を繰り返す事」とする場合、走り込みは日本の野球界において「基本」とされてきた練習法の一つであり、体づくりのためには「必須」とまで言われて来ました。しかし最近ではそんな走り込みも、あまり効率の良い練習法とは言えず、むしろ他のトレーニング効果を打ち消し、筋肉を萎ませてしまうとまで言われるようになってきています。

「足腰を強くする」ためには、単純に足や背中などの筋肉を鍛え、その筋力を強化する必要があります。つまり走り込みも「筋力を強化するために適した方法」で行う必要がある訳です。もし走り込みによって「筋力の強化」を狙う場合、ウェイトトレーニングと同じ要領で、短い距離を全力もしくはそれに近い力量で走り、一本走ったら休養を取り、十分に呼吸が整ってから次の一本を走る必要があります。「何を休んでいるんだ」などと指導者に怒られるかもしれませんが、休息を取らずに何十本あるいは何百本と連続で走り、結果として長時間走り続けるような走り込みは、そもそも方法として間違っています。

また筋肥大を目指す場合も、ウェイトトレーニングの方が短期間で効果を得られますから、その意味でもわざわざ走り込みに固執する必要がありません。その他、何本も走ったからと言って、すぐに足が速くなる訳ではありません。単に走る本数を増やすだけでは、速く走るための技術は身につきません。そのような走り込みを行うなら、実際の試合を想定した走塁練習をした方がよっぽど効果的でしょう。

一方、走り込みを「心肺機能の強化(短時間のパフォーマンス)」を目的に行う場合も、やはり正しい実施方法で行う必要があります。特に心肺機能の強化ではインターバルトレーニングが効果的です。この方法では短時間の内に、全力に近い運動と不完全休養(呼吸が完全に落ち着く前に運動を行う)を繰り返します。つまりこの場合も、ダラダラと長い時間走る必要は全くない訳です。

ちなみに「LSDトレーニング」という方法では、長い距離を、時間をかけ、一定のペースで、ゆっくりと走ります。これは持久力を高めたり、血流を促す目的で行うもので、つまり走り込みでも、そのように行えば持久力を高める効果(長時間のパフォーマンス)も得られると思います。しかし前述のように走り込みは「足腰の強化」として行う事が多いため、そこで矛盾が生じてしまいます。長時間走るような方法で走り込みを行っても、筋力は強化できません。むしろ長時間の運動により筋肉は萎んでしまう可能性がありますし、特に実際の試合では長時間走るような場面は皆無ですから役にも立ちません。

またもし足腰の強化を「怪我の予防」として行う場合も、そもそも怪我の予防もウェイトトレーニング(工夫は必要だが)やストレッチや準備など運動前後のケアで十分対応可能な上、怪我には体の使い方、疲労、メンタル面など様々な要素が関係しており、筋力的な問題だけではありません。すなわち走り込みをしたからと言って、怪我に強くなる訳でもありません。


日本人はよく「同じ動作をひたすら繰り返す」事を「努力」と評します。確かに技術の向上には、その動作を覚えるまで、同じ動作を何度も繰り返す必要があります。しかし筋力の強化においては、ただ同じ動作を繰り返すというだけでは効率的な強化は望めません。またそもそも技術の向上に関しても、体を動かして練習をしている時だけ努力するのでは、効率的な向上は望めません。実際に体を動かす前に「どのように体を動かし、どのように練習したら良いのか」を考え、目的をはっきりさせてから行う事が重要であり、その意味でも「単なる動作の繰り返し」であってはならないのです。時間を効率良く使うためにはどうすべきか、今一度考える必要があるでしょう。