「運動中に水を飲むとバテる?」について考える(要点のみ)

※当記事作成日時:2019-05-31

「運動中に水を飲むとバテる」という迷信は、少なくとも戦前・戦後には生まれていたと考えられています。これは水不足が深刻な戦場(特に外国)において、喉が渇いた兵士が道端にあった水を飲んでお腹を壊した経験が元になったという一つの説があり、そうした兵士が現場から引退した後、指導者となった際、教え子に、そのまた教え子にと伝わっていったようです。しかし戦争が終わってしばらく経った後も、何故かその迷信は残り続け、つい最近まで信じられてきました。現在ではそのような指導者の方が批判されるようになってきていますが、未だにそのような指導方針を貫く指導者は多く、日本人にとって非常に根深い迷信の一つと言えます。

ちなみに赤白に分かれる体育祭、体育祭で行う障害物競走、学校で着る学ラン・制服、年に数回行う遠足、クラス内の班や組、集団行動で行う回れ右・右向け右・行進、起立・気をつけ・休め・礼・着席、朝礼そのもの、ランドセルなども、実は元々は軍事教育の一環で行われていたものの名残です。特に体育祭は海外から見ても珍しいもので、各種演目で、若者が集団であれだけ統率の取れた動きをするのは、外国人にとってはとてもクレイジーに見えるのだそうです。


では話を戻しますが、例えば水は1ml=1gの重さがあります。すなわち500mlでは500g、1Lでは1kgにもなります。それだけの水を一気に飲んで胃の中に入れれば、一時的にでもそれだけ体重が増加する事になるため、体の動きが鈍くなるという事は十分に考えられます。1kgのダンベルをお腹に入れて体を動かすという事ですから当然です。しかも水で満たされた胃が前後左右にバウンドする事になりますから、水を大量に飲む事で動きにくくなる=パフォーマンスが低下するという事はあり得ると思います。

また気温の高さに関係なく、筋肉を動かせば体温が上がります。それに伴って身体活動に必要なエネルギー代謝も促されます。そうして体温が上がると、人間では汗を皮膚の表面に出す事で熱を逃し、体温を常に一定に保とうとしますが、その際にはカリウムやナトリウムなどのミネラルが必要になります。特にカリウムは細胞内に取り込まれる際、細胞外に水分とナトリウムを排出し、細胞内外の水分量を調節する役割があります。これにより汗をかく事ができる訳です。すなわちカリウムが含まれていない「単なる水」による水分補給では、上手く汗をかく事ができなくなり、体温がどんどん上がって体の動きが鈍くなる可能性があります。それは当然パフォーマンスを低下させるでしょう。

しかしながら、それは「水分補給の仕方によって体が重く感じる」のであって、単に水分補給の仕方が下手なだけです。水分補給が適切に行われていれば、運動中に起こるエネルギー不足やミネラル不足を防ぐ事ができ、むしろ運動中のパフォーマンスを向上させる事ができます。運動中に水分補給を行う場合、一気に大量の水を飲むのではなく、小まめに少しずつ飲むようにし、またミネラルや糖を含んだ飲み物を用意すると良いでしょう。そして体温調節機能を司る自律神経が正常に機能するよう、運動時だけでなく、普段からの体調管理(規則正しい生活やストレスコントロール等)にも注意する事です。更に過度な日焼けにも注意する事(皮膚の修復に体液が使われるため、実は脱水症状を加速させてしまう)です。これらを守っていれば「バテる」事はありません。