スライダー系の球種における変化・握り・投げ方について

この記事ではジャイロボール以外の球種、特にスライダー系の球種(縦のスライダー、横のスライダー、カットボール等)における変化・握り・投げ方について私なりにまとめています。ご興味のある方は下記「続きを読む」よりどうぞ。
(記事作成日時:2014-05-09、更新日時:2019-03-27)

★当記事の目次

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スライダーは何故曲がるのか

スライダーとは簡単に言うと利き腕とは逆方向へ曲がる変化球です。投げている側から見て右投手のスライダーは左へ、左投手のスライダーは右へと曲がります。また右打者から見れば右投手のスライダーは外へ逃げていき、左投手のスライダーは内に向かってきます。左打者から見れば右投手のスライダーは内に向かい、左投手のスライダーは外へ逃げていきます。そのような球種の総称が「スライダー」です。

スライダーが何故利き腕と逆の方向に曲がるかというと、これはボールに横回転(スライダー回転)がかかっているからです。特に右投手や一塁側方向から見ると左から右へ、キャッチャー側や三塁側方向から見ると右から左へと回転しています。進行方向が上になるような形でボールを上から見た時、進行方向から受ける空気の流れを見てみると、ボールの左側では空気がスムーズに後方へ流れるのに対し、ボールの右側では回転方向と縫い目によって空気がせき止められ、後方へと流れづらくなります。これによりボールの右側では空気の密度が高くなり、ボールの左側では逆に空気の密度が低くなり、左右で圧力に差が生まれます。そうして圧力に差ができると、ボールに対して「圧力の低い方法へと移動する力」が生まれ、これによってボールには左方向への力が働きます。右投手の投げるスライダーはこうして左へ流れていく訳です。

特にスライダーでは横回転が多くなるほど横向きの力が強くなり、またその回転がより綺麗な横回転であるほど、その横向きの力は更に強くなります。これによってより大きく横へ変化させる事ができます。一方、ボールはリリースされたその瞬間から空気の影響を受けます。このため投げられたその時点でボールは既に横へと曲がり始めており、曲がり幅が大きいほど「この球種はスライダーだ」という事が分かってしまいます。すなわちスライダーは単に横の変化量が大きければ良いという訳ではないという事です。

尚、横回転の要素が大きいスライダーでは基本的に上向きの力は働かず、前面では空気抵抗を受け、また重力の影響も受けます。このため実際のスライダーは横だけでなく縦にも変化します。一方、純粋な横回転のスライダーを投げているピッチャーはプロではまずいません。特に上投げの場合、ジャイロ回転が混ざるのが正常です。ジャイロ回転が混ざるほど横方向への変化量は小さくなりますが、それにより縦の方向の変化は大きくなります。横への変化が小さくなる事で軌道はストレートに近くなり、ボールが落下するまで見極めづらくなります。またボールが落ち始める場所がバッターに近いほど、バッターの手元で急激に落ちているように見えます。これがいわゆる縦のスライダーです。一方、横回転に縦回転(順回転・トップスピンの事)が混ざる場合もあり、球速次第ではカーブのような軌道になります。

ちなみに、そのようにスライダーでは横回転の程度、ジャイロ回転の程度、縦回転の程度によって横や縦の変化が大きく異なります。握りや投げ方によってはカーブのような山なりの軌道を描くスライダー、カットボールのように変化量の小さなスライダー、フォークボールのように縦に大きく変化するスライダー、更にはカーブとスライダーの間の変化になるスライダー・・・などもあります。そのためその球種を「スライダー」とするか否かは、結局投げている本人がスライダーとして投げているか否かにより、厳密に区別できない場合があります。


スライダーにもフォーシームとツーシームがある

ストレート系で有名な球種に「ツーシーム」があります。この「シーム」については過去の記事でも説明した通り、1回転中に見える縫い目の数の事を言います。すなわち同じストレートでも縫い目の数が4本だとフォーシーム、2本だとツーシームです。何が言いたいのかというと、おそらくこれは殆ど知られていない事ですが、スライダーのような横回転でも、実はそのようにフォーシームとツーシームがあります。

その違いは何なのかというと、フォーシームでは4本の縫い目によって1回転中に4回空気を掻く事ができます。このためフォーシームの方が横の変化が大きくなります。一方、ツーシームでは2本の縫い目だけで空気を掻く事になる上、その2本の縫い目は一部分に偏っています。このためフォーシームよりも横の変化が小さくなり、空気抵抗も大きくなるため、これによって縦へ大きく変化するようになります。すなわち横のスライダーはフォーシームで、縦のスライダーはツーシームで投げた方が、各変化量を大きくする事ができます。ただし握り方の問題で、ツーシームで回転をかける場合、フォーシームよりも球速は出にくいです。このため縦のスライダーもフォーシームで投げた方が良い場合があります。

以上をまとめると、これによって言えるのは、投げる人によって変化する方向や変化量は大きく異なるという事です。「この球種はこの変化」「この球種はこの握り」というように決めつけてしまうと、自分に適した球種を見落とし、自分に適さない球種ばかり練習してしまう事があります。個人的に球種は「回転させる方向や回転軸の傾きを考える→変化する方向や変化量をイメージする→握りを調節する」という形で習得していく事をオススメします。


スライダー系の球種の簡単な分類

●変化による分類

・縦のスライダー:横回転が少なくジャイロ回転が主となっており、横の変化が小さく縦に大きく落ちる。ただし意図してジャイロ回転をかけている投手は少なく、リリースポイントが高いほど勝手にジャイロ回転する。尚、ジャイロ回転ではフォーシームとツーシームがあり、フォーシームでは減速が少なく、ツーシームでは減速が大きい。また握りの関係でツーシームの方が球速が出にくい。このため意図的にジャイロ回転をかけて投げる場合、フォーシームの方が良いと思われる。ただしその場合、横回転とジャイロ回転の配分を上手く調節する必要がある。

・横のスライダー:横回転が主でジャイロ回転の要素は少ない。このため横の変化が大きく、縦にも多少落ちる。純粋な横回転に近づくほど横の変化が大きくなるが、リリースの関係で球速が出にくく、軌道が分かりやすい。ちなみに横回転にもフォーシームとツーシームがあり、フォーシームの方が横への変化が大きくなる。一方、ツーシームではフォーシームよりは横の変化が小さいが、縦への変化が大きくなる。ただしツーシームの方が球速が出にくい。いずれも横の変化量の大きいスライダーを習得するメリットはあまりないかもしれない。

・スラーブ:横回転やジャイロ回転が主だが、そこに縦回転(順回転・トップスピンの事)が加わっている。リリースの関係上、スライダーとカーブの間のような独特の軌道を描く。ただし球速が出ない場合、山なりの軌道になりやすく、見極められやすい。ちなみに最近では球速の出るカーブ系のボールもあるため、厳密には区別できない。

・マッスラ:縦回転(逆回転・バックスピンの事)が主だが、そこに横回転やジャイロ回転が加わっている。これによりストレートのように直線的な軌道を描きながら、少しスライダー方向へと変化する。ジャイロ回転がない場合、横へ伸びるストレートになる。ジャイロ回転がある場合、少し沈み、沈む時に少しだけ横へと曲がる。どちらもストレートとほぼ握りが変わらないので、球速が出やすく、見極められにくい。変化量は指の位置により調節可能。尚、意図的に投げる場合はカットボールと呼ばれる。


●球速による分類

・高速スライダー:単純に球速のあるスライダー。リリースの関係上、縦のスライダーの方が球速は出やすい。また握りではフォーシームの方が球速が出やすい。
・スロースライダー:球速の遅いスライダーの事。球速が遅くなるほど山なりになり、カーブに近い軌道になる。


●握りによる分類

・横のスライダー

スライダーを横に変化させたいだけなら、単に横へボールを回転させれば良いので、右投手も左投手もボールの端を前に向かって回転をかけるようにして投げるだけです。握りについても、その回転をかけるためにはどのように握れば良いかを考えていけば良いだけです。

まずボールを正面から見た時、右投手の場合は右端に長い縫い目が、左投手は左端に長い縫い目が来るようにします。続いて中指の外側をその長い縫い目の「手前」に沿わせるように置き、指の外側に力を入れ、長い縫い目に対して少し斜めに横断させるように被せます。そして人差し指はそれに沿わせるような形にし、やはり外側に力を入れます。その中指・人差し指とちょうど反対側にある縫い目に親指をかけます。

この時、ボールを正面から見ると、自分の指の形は「II(右投手は右に、左投手は左に少し寄っている)」になっており、角度を変えて見ると「∪」のような形になっています。すなわちカーブの握りとほぼ同じで、回転のかけ方が少し違うだけです。この状態で中指の外側(実際には人差し指の外側にも力がかかっている)で縫い目を前へ擦るように投げれば、右投手は右回転の、左投手は左回転のボールが投げられ、横に変化するスライダーを投げる事ができます。尚、長い縫い目と言いましたが、短い縫い目を縦にし、それに指を被せるようにして握る方法もあります(スライダーで有名な伊藤智仁選手が例)。

画像ではこのような感じです。
スラ握り例1.png
画像では右方向へ矢印が書かれていますが、これは横方向ではなく、前方を意味しています。つまりボールを正面から横に向かって回転をかけるのではなく、ボールの横を前に向かって回転をかけ、それによって横回転がかかります。アンダースローでも基本は同じです(アンダースローでは真横の回転ではなく、バックスピンと横回転の間の回転、またはバックスピンとジャイロ回転の間の回転になる)。

また回転をかける際は手首を捻ったり指先だけで擦るのではありません。小手先だけで変化球を投げると、バックスピンストレートを投げる時と大きくフォームが変わる事で、球種を簡単に見極められてしまいます。もちろん故障の原因にもなりますし、力が伝わらないので球速も出ません。ですので手首は固定し、他の球種を投げる時と同じフォーム、リリース位置、力の入れ方ができるように練習しましょう。全身が生み出した力を中指の外側から最終的にボールへ伝えるようなイメージです。


・縦のスライダー

横のスライダーではそのようにボールの端を前へ擦るようにして投げますが、縦のスライダーではボールの端を上から下へ擦るように投げます。ボールへ力が伝わりやすいので球速が出やすく、軌道が直線的になるため、より見極められにくいボールになります。

では握り方ですが、横のスライダーと同じようにボールの端に長い縫い目が来るようにします。横のスライダーではその長い縫い目に中指の外側全体を添えましたが、縦のスライダーでは縫い目に対して指が斜めになるようにかけて握ります。このためより指先の外側に力がかかりやすくなります。また横のスライダーでは縫い目に沿わせた中指の外側全体で前に向かって回転をかけますが、縦のスライダーでは縫い目にかけた中指の「第一関節〜第二関節まで(やはり指の外側)」を使い、下に向かって回転をかけます。ただし投球フォームを横から見ると、手は上から下斜め方向へと振られます。

画像にするとこのような感じです。
スラ握り例2.png

このようにして回転をかけるとジャイロ回転がかかりやすくなり、ボールが縦に変化するようになります。ただし縦のスライダーでは「回転のかけ方」が重要なので、目的としている回転がかけられる縫い目を見つけさえすれば、どこの縫い目に指をかけるかを気にする必要はありません。画像ではだいぶ手前に指をかけているように見えますが、より奥に指をかけ、下ではなく前に向かって回転をかける事で、横への変化を大きくする事もできます。ただし指が長い事が重要になります。


・マッスラ(カットボール)

マッスラはバックスピンに横回転またはジャイロ回転が加わったものです。すなわちそのような回転がかかれば良いので、バックスピンストレートの握りから、利き腕方向に少しだけ指をズラして握るだけで投げる事ができます。

では実際の握り方ですが、まずバックスピンストレート(フォーシーム)の握りをします。すなわち長い縫い目の中央に人差し指と中指をかけます。その握りを正面から見て、右投手は中指と人差し指を少し右へずらして縫い目にかけ、左投手は少し左へずらして縫い目にかけます。ただし下にある親指と添える薬指や小指はストレートのままなので、「中指と人差し指だけ」をズラす事になります。こうする事で投げる際にボールの右側に力がかかるようになり、バックスピンに少しだけ横回転が入るようになります。指をズラす位置を調節する事では横の変化や球速を調節する事もできます。

カットボール.png

尚、コツは必要ですが、横回転ではなくジャイロ回転をかける事もできます。それにより横ではなく縦の変化が出るようになり、バッターの手元で少しだけ沈む変化になります。またこれは過去の記事でも説明していますが、ジャイロボールは落下していく際、僅かにスライダー方向へと流れる性質があるので、バッターの手元では少しだけ横へも変化します。更にフォーシームのジャイロ回転で投げていれば減速が小さくなるので、よりバッターの手元で変化するカットボールとして利用する事ができます。

※尚、各種握り方の画像は準備中です。




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