筋肉の構造・速筋と遅筋の違いを簡単に理解しよう

筋肉の線維には瞬間的に大きな力を発揮する際に使われる「速筋線維」と、持久的に力を発揮する際に使われる「遅筋線維」があると言われています。この記事ではそんな「速筋」と「遅筋」それぞれの持つ特徴について私なりにまとめています。ご興味のある方は下記「続きを読む」よりどうぞ。

※当記事作成日時:2013-11-17、最終更新日時:2019-12-02

★当記事の目次

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●そもそも筋肉はどのような構造になっている?

筋肉の元になる細胞には「ミオシン」と「アクチン」という2つの種類があり、それぞれが「フィラメント(囲いのようなもの)」という線状の蛋白質を構成しています。特にアクチンフィラメントは「Z膜」という膜で区切られており、Z膜の両端から中央に向かって何本も平行に伸びています。その間をやはり平行に並んでいるのがミオシンフィラメントで、2つのアクチンフィラメントに挟まれるような形で1つのミオシンフィラメントが繋がっています。このアクチンフィラメント・ミオシンフィラメント・アクチンフィラメントという一つ一つの区切りの事を「筋節(サルコメア)」と呼びます。

また「筋節」はたくさん横並びする事で「筋原線維」を構成しています。そしてその筋原線維が束になったものが「筋線維(筋細胞)」、その筋線維が束になったものが「筋線維束」、更にその筋線維束が束になる事で「筋肉」を形作っています。もちろんこれらの用語を厳密に覚える必要は全くないのですが、このように単に「筋肉」と言っても実はかなり緻密な構造をしているのです。

ちなみにミオシンフィラメントは2つのアクチンフィラメントの間に入り込む事ができ、それが筋肉全体で起こる事で筋肉は収縮し、収縮した筋肉に繋がっている腱が骨を引っ張り、関節を動かす事ができます。またアクチンフィラメントとミオシンフィラメントには、そのように重なっている部分と重なっていない部分があります。フィラメントは規則的に並んでいるため、重なっている部分では色が濃く、逆に重なっていない部分では色が薄く見えます。つまり見た目として縞模様に見えるため、これが「横紋筋」という名前の由来になっています。



●速筋線維と遅筋線維について理解しよう

前述した「筋線維」ですが、大きく分けると2つの種類があると言われています。それが「速筋線維(速筋)」と「遅筋線維(遅筋)」です。それぞれの特徴を理解する事でトレーニング及び練習を効率化させましょう。


・速筋線維とは?

「速筋線維(以下速筋)」は主に「無酸素運動」において利用され、短時間で爆発的にエネルギーを消費し、大きな筋力を発揮する事ができます。特に無酸素運動の代表例が筋トレです。筋トレではダンベルなどの重量を用いて筋肉に対して大きなストレスをかけ、そのストレスに抗おうとする事で、ストレスをかける以前よりも筋肉の細胞が大きくなります(増える訳ではなく肥大化する)。実はその時に大きくなるのがこの速筋なのです。それによって速筋は鍛えるほど大きくなり、それに伴って筋力が向上、また見た目にも大きな変化をもたらす事ができます。しかしそのように短時間でエネルギーを爆発的に消費してしまうため、持久力がなく、その大きな筋力は長続きしません。全力で運動を行えばすぐに疲れてしまうでしょう。

そんな無酸素運動を続ける事ができる具体的な時間は、最初にクレアチンリン酸を使って行う「7〜8秒」と、グリコーゲンを使って行う「33秒程度」、すなわち合計40秒程度しか持ちません。つまり筋トレの場合、目的によって1セットを10秒以下、あるいは40秒以下に抑える事が重要になると思われます。一方、最初のクレアチンリン酸は休息を取ればその日の内に回復しますが、グリコーゲンの場合、完全に回復させるまでには2〜3日程度かかると言われています。つまり「グリコーゲンを消費するような激しい運動を毎日行うのはあまり効率が良くない」「少なくとも1〜2日はグリコーゲンの回復に努める必要がある」という事もここから分かります。

尚、速筋はいわゆる「白筋」とも呼ばれており、見た目上、色が白く見えます。実はこれは動物でも同じで、例えば白身魚なんかでも白筋が多く、瞬発力な運動能力に優れています。このため魚を食べる場合、白身魚を食べた方が速筋の栄養源になる可能性があります。


・遅筋線維とは?

「遅筋線維(以下遅筋)」は、持久的に力を発揮し続ける事ができる筋肉の線維の事です。こちらは酸素を使いながら、脂肪などのエネルギーを消費する「有酸素運動」において主に利用されます。特にこの遅筋は例え鍛えたとしても速筋のようには大きくならず、瞬間的に大きな力を発揮する事もできません。しかし使い込む事によってエネルギー効率が高まり、エネルギーを効率良く、また少しずつ使う事で、運動を行う時間を伸ばす事ができます。尚、有酸素運動ではそのように脂肪が燃えるイメージが強いのですが、実際には脂肪だけが燃える訳ではありません。糖や乳酸も一緒に燃えます。有酸素運動ではエネルギー供給が遅くても問題ないので、様々なエネルギーを使う事ができるのです。

ちなみに例えば動脈内の血液は赤色をしていますが、これは赤血球の中にあるヘモグロビンが酸素と結合した事による色です。一方、酸素の消費量が多い筋肉ではヘモグロビンによる酸素の供給だけでは効率が良くないので、筋肉内にある「ミオグロビン」が酸素を貯蔵し、その酸素も使って筋肉を動かします。特に遅筋はいわゆる「赤筋」とも呼ばれており、見た目上、赤色に見えますが、実はその色はこのミオグロビンによるものなのです。これは動物でも同じで、例えば赤身魚や赤身肉も赤筋が多く、持久的な運動能力に優れています。このため肉や魚を食べる場合、赤身を食べた方が遅筋の栄養源になる可能性があります。


ただし実際の筋肉の線維には、速筋と遅筋、両方の要素が混ざり合った「中間筋」もあると言われています。つまり速筋と遅筋ではそこまで厳密に役割分担をしている訳ではありません。要は無酸素運動と有酸素運動、どちらの運動を行うのに適した性質を持っているかという事です。



●速筋と遅筋の特性から考える「健康」

速筋と遅筋の特性については前述した通りです。速筋を鍛えれば、瞬発的な一つ一つの運動を楽に行えるようになります。これにより結果としては無酸素運動を行う事のできる時間が長くなり、持久力の向上にも繋がります。また遅筋を鍛えれば、長時間の運動を行う事ができるようになります。こちらは大きな筋力は発揮できませんが、逆に言えば大きな筋力を発揮しなければ疲れを感じにくいという事です。これにより疲れを次の日に残さず、次の日、そのまた次の日もパフォーマンスの低下及び体調を安定化させる事ができます。

その他、筋肉には共通して「収縮する事で熱を作り出し、周囲の血液を温め、それを全身へ循環させる事で体温を上げる」という重要な役割があります。つまり筋肉が大きいほど作り出す熱の量が大きくなり、体温を維持する能力も高まる事になります。このため体温を上げる必要があるような環境(室温・気温が低い)においては、速筋を鍛えるメリットが大きいと思われます。

一方、速筋と遅筋では「熱を作り出す時間」が大きく異なります。速筋はそのように短時間で一度に大きな熱を作り出す事ができます。しかし体を動かしている間は温かくても、すぐに疲れて運動を止めざるを得なくなるため、その熱は長続きしません。運動を止めればすぐに体が冷えてしまうでしょう。逆に遅筋は一度に大きな熱を作る事はできず、熱が作られるまでに時間がかかります。しかし長時間の運動ができるので、その間、ジワジワと少しずつ熱を作る事ができます。このためエネルギーを節約しながら、体温を長時間維持する事ができます。

例えばダイエットなんかでは「脂肪が燃えやすく溜まりにくい体質」を目指すために、「遅筋を鍛える」事を重視する考え方があります。実際にメディアでもそうして遅筋の重要性ばかりが紹介されます。しかし実際は速筋と遅筋、どちらにもメリット・デメリットがあり、バランス良く鍛える事が重要になります。速筋を鍛えて作る熱の量を増やし、遅筋を鍛えてその熱が長続きするようにする訳です。



●速筋と遅筋の割合は生まれながらにして決まっている

速筋と遅筋の「元々の割合」は、「生まれながらにして決まっている(殆どは両親から受け継がれる)」という事が分かっています。つまりどれだけ筋トレをしようが、どれだけ長時間走ろうが、その割合を変える事はできないという事です。特に陸上競技や水泳競技などのタイムを競うようなスポーツでは、技術レベルが拮抗している強者同士の競争になるほど、その差が形になって現れやすくなります。このため子どもの「速筋と遅筋の元々の割合」が早期に分かれば、「どのスポーツを目指した方が良いか」という事も自動的に分かります。

しかし「速筋と遅筋の元々の割合」というのは、見た目だけでは判断する事はできません。例えば走るのがとても速い場合、見た目上は速筋の割合が高そうに見えると思います。しかしそれは「周囲よりも走るために効率の良い体の使い方をしている」からこそ速く、実際には速筋よりも遅筋の割合が高い場合があるのです。これは逆に長距離走でも同じ事が言えます。特に子どもの頃は速筋や遅筋の割合よりも、技術レベルによる差が成績に出やすいため、両親あるいは先生の「見る目」はあまり当てにならない事が多いです。

そもそも子どもの時点では、速筋と遅筋の割合が影響するほどにまで自分を追い込む事がないので、見た目の「走るのが速い」という主観だけでは、スポーツへの向き・不向きを判断する事はできません。一応、筋肉から細胞を取り出して調べる事もできなくもないですが、わざわざそのような事をする日本人の親はほぼいませんから、尚更、周囲の大人による勝手な決めつけは良くないと思います。

ここで言いたい事は唯一つ。例え小さい頃には周囲と比べて劣っていても、それは単に効率の良い体の動かし方を知らないだけであり、後天的にでも技術を高める事ができれば、その子が自分の才能を発揮する事はできるという事です。小さい頃には球速が遅くても、足が遅くても、体が小さくても、技術を高めていけば野球選手としての道を作る事は十分可能なのです。今できる事から少しずつ積み重ねていくべきでしょう。



●速筋と遅筋の割合に囚われない

日本人は平均的に遅筋の割合が高い民族とされており、具体的には速筋が30%程度に対し、遅筋は70%程度あると言われています。この速筋と遅筋の割合だけを考えると、日本人は「生まれながら長時間の有酸素運動を行うような競技に向いている」という事が言えると思います。そのためどのようなスポーツを選ぶにしても、そのような筋肉の特性を活かすようなプレースタイルが重要になります。一方、日常生活においてもそれは同じで、日本人は短時間で大きな力を要するような事よりも、長時間少しずつ小さな力を要するような事に向いています。そのような仕事を選んだり、あるいはそのような体の使い方をする事で効率性が上がるでしょう。

ただしその「長時間の運動に向いている素質」というのは「遅筋の割合だけ」を考えた場合の話であり、実際の「長時間の運動能力」には様々な要素が関係しています。例えば血管の太さ・強度・枝分かれ、血液を作る能力、ミトコンドリアの量・その能力、肺や心臓の大きさ・能力、ホルモンの分泌量やそのバランス、単純な走る技術・体の使い方・ペース配分・駆け引きなどです。実はこれらの中には後天的に鍛える事ができる能力もあり、例え遅筋の割合が低くてもそれらの能力を鍛える事で十分に勝負できます。つまり前述のように「生まれつき」とは言いましたが、全てが速筋と遅筋の割合だけで決まってしまう訳ではないのです。

ここで言いたいのは「自分の体質」に対する考え方です。大人では「太りやすい体質」「筋肉がつきにくい体質」「スポーツや運動に向いていない」などと考え、それを運動をしたくない事の理由あるいは現状から目を背けるための言い訳にする人が多いです。特にそれが子を持つ親の場合、子どもにもその考えを押し付けてしまいます。「自分がこうだから子どものそう」という事です。確かに速筋と遅筋の割合は遺伝しますが、100%が遺伝される訳ではなく、そもそもそのように速筋と遅筋の割合は見た目だけでは誰にも分からない事です。また運動能力には速筋と遅筋以外の様々な要素も関係しており、結局「体の使い方」次第な事が多いです。



●貴方は筋肉が付きにく体質?本当にそう?

例えばオリンピック・陸上競技・男子100m走の決勝においては、現在ほぼ全ての選手が9秒台で走っており、日本人はそのスタートラインに立つ事すらできていません。あの舞台で走る事ができる海外の選手では、その速筋の割合が実に80%以上あるとも言われており、その割合だけを考えれば、彼らは生まれながらにして短距離走など「瞬発的な大きな力を要するような競技に向いている」という事が言えると思います。逆に日本人選手の殆どが未だに9秒台で走る事ができていないのは、前述したように速筋の割合が低く、またいくら筋肉を鍛えたとしても、その元々の割合を変える事ができないからです。

特に速筋は鍛えれば鍛えるほど太く大きくする事ができるため、生まれつきの速筋の割合による差は、トレーニングを行うほど大きな差となって現れます。例えば速筋の割合が30%程度しかない人と80%以上ある人が、同じペースで同じだけのトレーニングを続けた場合、当然速筋の割合が80%以上ある人の方が筋肉は太く大きくなります。日本人選手がスタートラインに立つと、周囲の選手と比べて際立って体が細く見えると思います。日本人も科学的・医学的に効率の良いトレーニングをたくさんしているはずなのですが、それでも埋められない差があるのです。

しかしながら、例えそのような瞬発的なスポーツであっても、やはり速筋や遅筋の割合、あるいは筋肉の大きさだけで全てが決まってしまう訳ではありません。速筋の場合には特に「速筋の割合が高い=トレーニングの成果が見た目にも分かりやすい形で出やすい」だけの話であり、そもそも速筋の割合が影響するほどまで自分を追い込んでいる人でなければ、その「差」を考える必要はないはずです。もちろん「走る」という技術レベルが頂点に達している者同士での競い合いであれば、「あぁ・・・速筋の割合が低い日本人は不利なんだな」「骨盤の傾きや足の長さなど骨格的に不利なんだな」などと考えて良いかもしれませんが、それなら尚更、我々のような素人(特に親)が「日本人は速筋の割合が低いんだ=自分はそういうスポーツには向いていない」などと考える必要はないのです。親なら最初から決めつけてしまうのではなく、その子がどのような道を選んだとしても、自分の能力を発揮する事ができるようサポートしてあげましょう。





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