速筋と遅筋の割合、運動神経が良い悪い

「速筋と遅筋の割合」と「運動神経が良い悪い」について書きます。 
 
 
まず、筋肉の構造を説明します。
筋肉の最小単位は細胞(タンパク質)である「ミオシン」と「アクチン」です。
ミオシンとアクチンがそれぞれ「フィラメント」というものを構成しており、
アクチンフィラメントがミオシンフィラメントの間に入り込む事で、
筋肉が縮み(エネルギーにATPを使う)、それによって筋肉が収縮します。

フィラメントは「Z膜」という膜で区切られており、
その一つ一つの区切りを「筋節(サルコメア)」と言います。

その筋節がたくさん連なったものが「筋原繊維」という筒状の繊維で、
筋原線維が束になったものが「筋線維(筋細胞)」、
そしてその筋線維が束になって「筋肉」を形作っています。

その「筋肉」は大きく分けると2つの種類があると言われています。
それが「速筋」と「遅筋」というものです。

速筋は瞬間的に強い力を発揮する筋肉ですが、
その反面、持久力がなく、その筋力は長続きしません。
速筋は遅筋とは違って鍛えて太くする事ができます。
筋肉が太く大きくなると筋力も上がります。

逆に遅筋は持久的に力を発揮し続ける筋肉ですが、
速筋のように瞬間的に大きな力を発揮する事はできません。
遅筋は鍛えても太く大きくはなりませんが、
使い続ける事で次第に長時間の活動ができるようになります。
(速筋は赤色、遅筋は白色をしているそうです)

実際には両方の要素が混ざり合った「中間筋」もあり、
速筋と遅筋でそこまで厳密に役割分担をしている訳ではありません。

しかし上記の特徴から速筋と遅筋の割合によっては、
スポーツにおける向き不向き、有利不利に大きく関わってくる場合があります。
陸上競技や水泳競技などタイムを競うようなスポーツでは特に言えます。

そしてこの速筋と遅筋の「元々の割合」というのは、
実は「生まれながらにして決まっている」という事が分かっています。

具体的には90%以上が両親から受け継がれます。
ですので、両親の速筋の割合が高ければ子どもも速筋の割合が高くなりますし、
逆に遅筋の割合が高ければ子どもも遅筋の割合が高くなります。

生まれながらにして決まっているという事は、
どんなに筋トレをしようがどんなに長い時間走ろうが、
この速筋と遅筋の割合を変える事はほとんどできないという事です。
(例え割合を変える事ができても本当にごく僅か)

生まれながらにしてスポーツへの適性があるのは、
残酷と言えば残酷なのですが・・・。



例えば日本人は平均的に遅筋の割合が高い人種です。
具体的には、速筋が30%程度なのに対し、遅筋は70%程度です。

つまり、この速筋と遅筋の割合から見れば、
日本人は生まれながらにして、
長距離走など長時間運動するような競技に向いているという事が分かります。

特に70%という数字は非常に高い数字であり、
日本人のほとんどが、
マラソンランナーになれる素質を持っているという事になります(笑)

ただし、その素質に気づける人間はその内の極僅かです。
何故なら長距離走のトレーニングは、
長い時間、長い期間続けなければ効果が見れないからです。

日本人選手がこれまでマラソンで優秀な成績を収める事ができたのは、
遅筋の割合が高いという事が一つの理由として挙げられます。
日本人でトップクラスのマラソン選手であれば、
当然この平均よりも更に遅筋の割合が高い事でしょう。

もちろん遅筋の割合が高いからといって必ずしも大会で勝てるとは限りません。
走る技術、駆け引き、体調管理、心肺機能などや、
そもそも遅筋の割合が影響するほど自分を追い込んでいなければ、
いくら遅筋の割合が多くても意味はないでしょう。
日本人がマラソンで強いのはそういう部分も大きいと思います。

それに持久力は、
毛細血管やミトコンドリアの数、心臓の強さ、酸素を取り込む能力など、
遅筋の割合だけで決まるのではありません。
もっともそれらにも遺伝的な要素が関わってきますが・・・。

ちなみに日本以外にもケニアやエチオピアの黒人選手のように、
平均的に遅筋の割合が高い人が多い国があります。
特にケニアやエチオピアの選手は、
日本人のトップ選手よりも遅筋の割合が高いです。

まぁ日本人の遅筋の割合はあくまで平均的な話であって、
中には速筋の割合が多い人もいます。
ですから、陸上の桐生選手のような人も稀には現れるでしょう。

一般の人で言えば遅筋の割合が高いほど、
長時間の運動をしても疲れにくく、脂肪が燃えやすくなります。
野球で言えば遅筋の割合が高いほど、
トレーニング次第で筋肉が疲労しにくくなり、
特にピッチャーではより長いイニングを投げる事ができます。



一方、陸上短距離で9秒台で走るような黒人選手は、
速筋の割合が70%以上や80%以上とも言われています。
つまり、生まれながらにして短距離など、
瞬発的な力を要する競技に向いているという事になります。

ジャマイカの選手が100m走で優秀な成績を収める事ができるのは、
速筋の割合が高いという事が一つの理由として挙げられます。
逆に日本人選手が未だに9秒台で走る事ができないのは、
いくら体を鍛えても元々の速筋の割合が低いからです。

特に速筋は鍛えると太く大きくなるので、
速筋の割合による違いは遅筋の割合による違いよりも目に見えて現れます。
例えば速筋の割合が70%の人と80%の人が同じ分だけ筋肉を大きくしたら、
当然、80%の人の方が筋肉の量は多くなります。

筋肉は大きくなるほど発揮される筋力は強くなりますから、
日本人選手が陸上短距離で活躍できないのは、
やはり圧倒的な筋肉量の差にあると思われます。
スタート時点で際立って日本人の体が細いのが分かると思います。

もちろん、速筋の割合や筋肉の太さで全てが決まる訳ではありません。
例えばボルトは見るからに速筋の割合が高いのですが、
ボルトよりも速筋の割合が高い日本人が奇跡的にいたとしても、
走る技術、駆け引き、体調管理、体格などがボルトより劣っていれば、
ボルトに勝つ事はおそらく不可能でしょう。

ボルト選手は脊柱側弯症という背骨が曲がる病気を抱えています。
これはスポーツをする上では本来不利なハンデです。
しかし彼はそれを凌駕するほどの厳しいトレーニングを毎日行いました。
いくら速筋の割合が高くても努力をしなければ彼のようになる事はできませんね。

速筋の割合が高い=筋力が上がりやすいという事ではなく、
速筋の割合が高い人は筋力トレーニングの結果が出やすいという事です。
野球で言えば速筋の割合が高いほど、
トレーニング次第で150km/h超のボールを投げる事ができるようになります。
将来、150km/h超のボールを投げる事ができる可能性が高いという訳です。



こういう人種での括りはあまり好きではないのですが、
このように速筋と遅筋の割合は人種や国によって大きく異なります。
また、例え同じ国の人でも人によって速筋と遅筋の割合は全く異なります。
世の中色んな人がいますからね(笑)

速筋と遅筋の割合自体はほとんど変える事はできませんが、
代わりに速筋や遅筋は鍛える事ができます。
速筋は鍛えて太くする事で筋力が上がりますし、
遅筋は鍛える事で、より持久力が上がります。

一説には速筋はトレーニングによって、
遅筋に近い性質を持たせる事ができるそうです。
遅筋に速筋の性質を持たせるのは難しいようですが・・・。



では、速筋と遅筋の割合を自分で知る方法はないのでしょうか?
実は速筋の割合に関してはある程度求める事ができます。

計算式:速筋の割合=69.8×A-59.8
(A=50m走の速度/12分間走の速度)
Aは50m走の速度を12分間走の速度で割ったものです。
そのAを69.8にかけて、そこから59.8を引くと答えが出せます。

あ、計算が面倒なのでこちらのサイトへ(笑)→速筋量計算ツール
こちらのサイトに50m走のタイムと12分間に走れる距離を入力すると、
ある程度の速筋の割合が出ます。
(入力する値によって大きく結果が異なりますので参考程度に)

ですが何度も言うように筋肉の割合だけで全てが決まる訳ではありません。
速筋の割合が高いから才能があって、
速筋の割合が低いから才能がないという事にはなりません。
逆も同じです。

例えば野球では、生まれつき速筋の割合が高い方が、
「鍛えれば将来速い球を投げる事ができる」可能性が高くなるでしょう。
しかしコントロールや守備などには筋肉の割合は関係ありません。
いくら球が速くてもコントロールが悪かったら使いものにはならないと思います。

それに球技に要求される筋肉は速筋と遅筋が半分ずつというのが一般的です。
何故ならボールが動いている間は、自分も動き続けなければいけないからです。
試合が終わるまで持たせるためには遅筋も多少必要なんですね。

その他、球技にはボールを使って戦う相手が、
団体競技では一緒にボールを使って戦う仲間もいます。
戦術、仲間とのコミュニケーション、ボールを扱う感覚など、
そういう所はタイムを競う水泳や陸上競技などにはない要素です。

生まれ持った才能だからと諦めたらそこで試合終了ですよ(笑)
重要なのは自分のできる事を徹底的にやる事ではないでしょうか。
筋肉の割合を気にするのはやれる事をやり尽くしてからです。



最後に、速筋と遅筋の割合に関連して、
「運動神経が良い」「運動神経が悪い」という言葉があります。
一般的に運動神経が良いと言われる人は運動が何でもできる人の事を、
逆に運動神経が悪いと言われる人は運動が苦手な人の事を言います。

運動神経というのは体を動かすためにある神経で、
脳からの命令(電気信号)が運動神経を通り、
命令が筋肉に伝えられる事で体を動かしています。

ですので「運動神経の良し悪し」というのは、
脳からの命令(電気信号)が、
体の隅々まで届いているか届いていないかによります。

また、その命令を伝える神経が、
指の先から足の指の先まで細かく枝分かれし、
その全てに命令が行き渡る事で体を緻密に動かす事ができます。

しかし重要なのは「運動神経が良い」「運動神経が悪い」は、
速筋と遅筋の割合とは違って「生まれつき」のものではないという事です。
運動神経の良し悪しというのは、
主に「神経が発達する期間にどれだけ運動を行ったか」によります。
この期間を「ゴールデンエイジ」と呼びます。

ゴールデンエイジは具体的には「3歳〜12歳」の間です。
この3歳〜12歳という期間は神経系が物凄いスピードで発達します。
ですので、この期間にどれだけ運動を行ったかによって、
運動神経の良し悪しというのが決まってきます。

もちろん神経というのは遺伝的な要素も関わってきますが、
神経がいくら最初から優れていても使わなければ意味がありません。
ですのでこの期間に神経を使う事が重要なのです。
また、この期間を過ぎるとこれ以上の速いスピードでの神経の発達はありません。
(大人が何らかの事故で神経が切れた場合、伸びるまでに数年〜数十年かかる)

将来、いわゆる「天才」と呼ばれるようなスポーツ選手は、
この期間、あるいはこの期間以前の幼い頃から、
本当にたくさんの運動を種類を問わず自由に行っています。
そうする事で運動神経が発達し、「運動神経が良い」人になります。

更に神経系の発達という事で、
この期間から勉強したりして頭を使うと頭の回転も速くなります。
(脳の発達は生まれた瞬間から行われるので、
脳を使うのは早ければ早いほど良い)

いわゆる「天才頭脳」と呼ばれるような人たちも、
このゴールデンエイジの期間やそれ以前から、
たくさんの本を読み、たくさんの勉強をしています。
そうする事で脳の神経回路が発達し、「頭が良い」人になります。

このように将来スポーツ選手を目指す場合に限らず、
技術者、学者、研究者などを目指す場合にも、
この期間にどれだけ神経を発達させるかという事の方が重要なのです。



よく「うちの子は運動が苦手だから」「うちの子は馬鹿だから」と言う親がいますが、
上記のように運動神経や頭の良さは生まれつきのものではなく、
ゴールデンエイジの期間にどれだけ神経を発達させるかが重要なので、
それは単に「親の教育力がない」という事になります。
そういう言い訳を言うのはもうやめましょう。

そう言われてどういう育ち方をするか考えてみて下さい。
やる気も自信も夢も希望も目標も目的も勇気もなく、
何かを始めても途中で諦めてしまうような子になってしまうでしょう。

親なら子どもを生んだ事に責任を持ち、
親の誇りとなるような子どもに育てるべきですし、
子どもの誇りとなるような親であるべきだと思います。

また、運動神経そのものが子どもへ受け継がれる事はないので、
いっくら運動が得意な親の子どもでも運動が得意とは限りません。
スポーツ選手の子どもがスポーツ選手になるとは限りませんよね?それと同じです。
上記の通りゴールデンエイジやそれ以前からの子育て、教育が重要なのです。

という事は逆に親が全く運動ができなくても、
教育次第で子どもが将来スポーツ選手になるという事もできるという事です。
もちろん子どもの夢というのは子ども自身が決めるべきではありますが、
どんな夢でも叶えられるよう教育をするのが親の責任だと思います。
posted by SaruyaMichael at 17:00 | TrackBack(0) | 筋力トレーニングメニュー集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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