野球で起こりうる肩の怪我

肩に関する怪我は野球では多く、職業病とも呼ぶべきものです。

疲労が積み重なる事によって起こる慢性的なものと、
突発的に起こるものとがありますが、
元々の骨格や関節の柔軟さなど、遺伝的な事も原因となる部位です。

考えられる怪我を一つ一つ簡単に説明していきます。 
 
 
●ルーズショルダー(肩関節不安定症、動揺肩)
ルーズショルダーは肩関節がしっかりと固定されず、
不安定な状態になってしまう事を言います。

原因は肩関節を覆っている靭帯や腱板が正常に機能しない事によって、
腕の骨(上腕骨)がズレやすくなってしまう事によります。

腕の骨が正常の位置からズレると肩関節に大きなストレスが加わり、
それが積み重なる事によって、
痛みや痺れ、肩が抜けるような違和感などの症状が現れ、
人によっては全力投球ができなくなります。
酷い場合には全力投球時に関節が外れてしまう(脱臼)事もあります。

また、ルーズショルダーは骨格や関節の柔らかさなど、
生まれつきの要素(遺伝)も関わってくると言われており、
そういう人が肩を酷使したりするとルーズショルダーになる事があります。

ただし、野球のピッチャーの場合、
肩を酷使すると誰でもなり得る可能性があります。
一旦症状が出てしまうと治療のために長期離脱を余儀なくされます。
ので、しっかりと予防する事が重要になります。

プロの有名選手では斉藤和巳選手、伊藤智仁選手など、
例え絶大な能力を持つピッチャーであっても、
ルーズショルダーによってその選手生命を絶たれる事もあります。

具体的には、
・インナーマッスルである腱板(ローテーターカフ)を鍛える
・体幹の筋肉(背筋や腹筋)を鍛えて姿勢を正す
・僧帽筋を鍛えて頭の位置と肩の位置を正常に戻す
・肩に負担のかからないようなフォームにする
・日頃から肩関節や肩周りのストレッチをする
・疲労が蓄積しないように1試合の球数を少なくする(酷使しない)
・登板後のケア(アイシングやクールダウンなど)をする
・規則正しい生活を続ける(疲労を肩に溜めない)
こういった事で最低限防ぐ事が可能です。

ちなみに猫背の人はルーズショルダーになりやすいと言われています。
背中の筋肉が機能せず猫背になると、
肩を上へ上げる僧帽筋が伸ばされた状態になりやすくなります。

その状態が続くとその僧帽筋が機能しなくなり、
肩が下へ下がって撫で肩になります。
そしてこの時、肩の三角筋やインナーマッスルは、
これ以上肩が下がらないよう常に緊張するようになります。

特にインナーマッスルは持久的に働く筋肉ですので、
常に緊張する事で疲労が蓄積しやすくなり、これも機能しなくなります。
それによって上腕骨の位置が定まらなくなり、
肩関節が不安定な状態になるのです。

その状態で全力投球をすれば遠心力で肩に隙間ができ、
隙間に靭帯や筋肉の腱が挟まりやすくなります。
(下記のインピンジメント症候群)
それが繰り返される事で炎症、周囲の筋肉、腱、靭帯を損傷します。

よく肩の痛みを軽減するために、
インナーマッスルのトレーニングから始める人がいますが、
そもそもの原因である背筋や僧帽筋を鍛えない限り、
いくらインナーマッスルを鍛えても肩の痛みは完全にはなくなりません。

肩に痛みがある人はまず体幹(背筋や腹筋)を鍛えて姿勢を正すようにし、
首の後ろ側にある筋肉(僧帽筋)を鍛えて頭の位置と肩の位置を正常に戻し、
最後にインナーマッスル(ローテーターカフ)を鍛えましょう。

それからストレッチについてですが、
「肩の柔軟性がないから肩を故障する」と考えている人が多いのですが、
実際は肩よりも肩周りの柔軟性の欠如が、
結果として肩を動かしづらくしている事が多いです。
肩を回すだけでなく首や背中などもよくストレッチしておきましょう。



●インピンジメント症候群
ルーズショルダーなどの様々な原因によって、
腕の骨(上腕骨)が正常な位置に保たれず、
関節の骨と骨の間に腱や靭帯が挟まってしまう事を言います。
それによって不快感や痛みを生じます。

腕を上げようとすると肩に何かのつっかかりがあったり、
腕を回す時にゴリゴリと何かが擦れるような音がするなど、
肩の違和感として症状が現れます。
それが痛みや痺れとなり、全力投球ができなくなります。

予防方法や改善の方法はルーズショルダーとほとんど同じです。
寝相や一時的な肩凝りなどによってもなる事があり、
日頃から姿勢を正し、よく肩や肩周りの筋肉を動かすようにしましょう。



●腱板損傷
肩関節を覆っている腱板を痛めてしまう怪我です。
腱板(ローテーターカフ)はインナーマッスルと呼ばれていて、
通常の筋肉よりも細い筋肉です。
それ故に酷使によって疲労が溜まりやすく、怪我をしやすい筋肉でもあります。

腱板を痛めると肩関節がスムーズに動かなくなり、
ルーズショルダーなどの症状が現れます。
ほとんどの原因が疲労の蓄積によるものなので、
治療のためには長期離脱を余儀なくされる事が多いです。

いわゆる「野球肩」のほとんどがこの腱板損傷ですね。
体ができ上がっている大人のプロ選手や、
体ができ上がっていない小中学生まで起こる、職業病です。

予防方法は上記2つと同じですが、
腱板は全力投球時に「力む」事でダメージを受けます。
肩に負担がかからないフォームにし、リラックスをして投げましょう。



●靭帯損傷、靭帯断裂
靭帯は肩関節の骨同士を繋いでいます。
靭帯の損傷具合には段階があり、
部分的にでも切れてしまうと腕の骨が正常に動かなくなります。

これは疲労が蓄積する事によって靭帯がジワジワダメージを受ける場合と、
疲労が蓄積している状態で1回の外力によって靭帯が切れてしまう場合、
また、フェンスに肩から激突したりする事によって、
急に靭帯が切れてしまう場合とがあります。

予防方法は上記3つと同じです。
特に疲労が溜まらないよう、登板後のケアが重要になります。



●SLAP損傷(スラップ病変)、関節唇損傷、脱臼
関節唇は肩関節にある軟骨の部分でお皿のような形をしており、
腕の骨を覆うように受け止める事で、腕をスムーズに動かす事ができます。
膝で言えば「半月板」のように衝撃を吸収する役目があります。

この関節唇を痛めるのが「SLAP損傷」です。
主に投球時に腕を下から上へ挙げた時に痛めると言われています。
もちろん一回で損傷する場合やジワジワと損傷する場合とがあります。
予防するには肩に負担のかからないような投球フォームにする事や、
日頃からストレッチを行う事、酷使しない事などが挙げられます。

一方、脱臼は主に1回の外力によって関節が外れてしまうものです。
靭帯や腱板などがしっかり働いていないと、関節が外れやすい状態になります。
ルーズショルダーの人が全力投球をする事で脱臼してしまう事があります。

また、フェンスへの激突などで突発的に起こる事があり、
脱臼と共に関節唇も痛めてしまう事があります。



●ベネット損傷
肩が酷使される事によって、
肩関節の後ろ(腋の後ろ側)の所に骨の棘ができてしまう事を言います。
他の方の怪我とは違い、
主に腕の裏側の筋肉(上腕三頭筋)の酷使によって起こります。

炎症を伴うため、投球時の違和感や痛み、
力が入らない、肩が凝るなどの症状が現れます。
症状が始まると治療まで2〜3ヶ月ほどかかる場合があります。

予防方法は今までの上記の症状とだいたい同じです。
posted by SaruyaMichael at 17:00 | TrackBack(0) | 野球で起こりうる怪我 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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