無酸素運動とは?その特性について簡単に理解しよう

単に「運動」と言っても様々な種類がありますが、運動は特に「運動を行う際に起こる体の反応」によって大きく2つの種類に分ける事ができます。それが「無酸素運動」と「有酸素運動」です。この記事ではその内の「無酸素運動」について私なりにまとめています。その特性を理解する事で、トレーニングを効率化させると共に、「運動」という言葉に対する考え方を変えていきましょう。ご興味のある方は下記「続きを読む」よりどうぞ。

(当記事作成日時:2013-10-11、最終更新日時:2019-11-28)

★当記事の目次

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★無酸素運動の仕組みについて簡単に

●クレアチンリン酸によるATPの合成

筋肉内にある細胞に限らず、あらゆる細胞は「ATP(アデノシン三リン酸)」をエネルギーにして活動しています。特にATPはそのように「リン酸の分子」が複数結合した形になっており、一つ一つのリン酸の分子が大きなエネルギーによって結びついています。つまりATPに結合しているリン酸の分子を一つ他所へ受け渡すだけでも、大きなエネルギーを運ぶ事ができる訳です。細胞はそのエネルギーを元に活動する事ができ、ATPにはそうしてエネルギーを運搬する重要な役割があります。

尚、ATPは主に糖などを分解する「解糖系」や「クエン酸回路」から得られるものです。ただし筋肉のように消費量及び消費頻度が高い場合、解糖系やクエン酸回路によるATPの供給だけでは量が足りない事があります。また数秒という短時間の無酸素運動においては、その場でATPを合成していたのではとても間に合いません。そのため筋肉においては「クレアチンリン酸」からもATPの供給を行います。これを「ATP-CP系」と言います。このクレアチンリン酸はエネルギーの一時的な貯蔵庫としての役割があり、解糖系などで得られたATPからリン酸を受け取り、それをあらかじめ一つ貯蔵しておく事ができます。無酸素運動の際にはこれを利用し、糖などを分解するよりも早く、その場ですぐにATPを供給する事ができます。

ただし一つのクレアチンリン酸に貯蔵しておけるリン酸は一つだけです。このためクレアチンリン酸によるATPの供給はごく短時間しかできず、全力での運動では「僅か7〜8秒程度」で枯渇してしまうと言われています。例えば陸上競技・男子短距離の100m走では世界記録が9秒台となっていますよね、実はそれにはこの事が大きく関係しているのです。そうしてATPを枯渇させた場合、何とかその場でATPを合成しようと努めますが、数秒という短時間の無酸素運動では、解糖系などによるATPの供給はもちろん、クレアチンリン酸への再合成も間に合いません。そのため筋肉は次第に動かしづらくなっていきます。


一方、そうしてリン酸を放出したクレアチンリン酸は一旦「クレアチン」という形になりますが、解糖系やクエン酸回路、あるいは後述するグリコーゲンなどから得られるATPを利用し、そのリン酸を一つ受け取る事で、再びクレアチンリン酸の形に戻る事ができます。特にこのクレアチンリン酸への再合成は数分程度で行う事ができると言われており、これによってすぐに次の「7〜8秒」という短時間の無酸素運動に備える事ができます。

また一部のクレアチンは代謝されてクレアチニンとなり、再吸収されずにそのまま尿として排出されてしまいますが、クレアチンリン酸の元になるクレアチンの合成も、数時間程度で行う事ができると言われています。このため全力での運動を行ったとしても、その後しっかりとした休息を取れば、数時間後には再び同程度のパフォーマンスでの全力運動が可能になります。例えば陸上競技・男子短距離の100mでは、準決勝や決勝をその日の内に行う事もありますが、それができるのはこの事が関係しているのです。

ただしこれはそのように「7秒程度」というごく短時間の無酸素運動を行った場合の話で、それ以上の無酸素運動が続くと、後述するグリコーゲンを利用したATPの供給が行われます。特にグリコーゲンは一度消費すると、補充するために長い時間がかかってしまいます。当然その間、グリコーゲンの回復に努めるよう、運動量を落とさなければなりません。スポーツの種類にもよりますが、それを最小限に留めるためには、できるだけ「クレアチンリン酸によるATPの供給」だけで済ますような体の使い方が必要になる事があります。


●グリコーゲンによるATPの合成

では、そうして8秒程度の全力運動を行った後、すなわちクレアチンリン酸によるATPの供給が上手くできなくなった状態で、更に全力での無酸素運動を続けるとどうなるのでしょうか。

実は筋肉内にはもう一つエネルギーを蓄えておく事ができます。それが「グリコーゲン」です。グリコーゲンは糖の一種でブドウ糖の集合体であり、これを分解する事でもATPを供給する事ができます。クレアチンリン酸と比べると速攻性はありませんが、グリコーゲンに含まれる複数のブドウ糖全てがATPの供給源になるため、クレアチンリン酸よりも大きなエネルギーを得る事ができます。これを利用すれば、クレアチンリン酸によるATPの供給ができなくなった後も、しばらくの間、筋肉を動かし続ける事ができます。

ただし筋肉内に蓄えておけるグリコーゲンの貯蔵量にも当然限界はあります。具体的に言えば、全力での運動では33秒程度で枯渇してしまうと言われています。つまりクレアチンリン酸によるATPの供給と合わせると約40秒程度であり、それ以上経過するとクレアチンリン酸によるATPの供給だけでなく、グリコーゲンによるATPの供給もできなくなります。もちろん解糖系などによってATPをその場で作る事もできますが、無酸素運動中の供給には間に合いません。当然筋肉は次第に動かす事ができなくなっていきます。

そうしてグリコーゲンを完全に近い形で消費した場合、それを消費する前の状態にまで回復させるためには、最低でも2〜3日程度かかると言われています。その間、筋肉は非常に動かしづらくなり、大きな疲労感を伴います。それを素早く回復させるためには、運動量を抑え、グリコーゲンの材料となる糖を摂取、及びその代謝を促す事が重要になるでしょう。


尚、グリコーゲンを分解する事では「乳酸」が大量に作られます。乳酸はその名の通り「酸性」で、血中に蓄積すると周囲が酸性に偏ります。すると、それを薄めようとして筋肉への血液の供給量、及び血液中に含まれる水分量が増え、これによって筋肉が大きく膨れます。これがいわゆる「パンプアップ」です。このパンプアップはあくまで一時的なもので、時間が経てば元に戻りますが、前述のようにグリコーゲンが消費されているので、疲労感はそのまま残ります。

またATPとしてエネルギーを運搬する過程では、結合し損ねた「リン酸」も大量に作られます。これはグリコーゲンの消費によっても起こりますが、実はクレアチンリン酸の消費だけでも起こる事です。で、これの何が問題なのかというと、このリンはミネラルの一種なのですが、同じくミネラルの一種である「カルシウム」と結合しやすい性質を持っています。特にカルシウムは筋肉を収縮させる際、神経伝達に使われるため、それがリンと結合する事で筋肉の収縮自体が上手くできなくなります。これも疲労感の元になります。

ちなみにグリコーゲンを分解する事で得られる乳酸は、代謝する事でクエン酸回路に組み込む事ができ、実はATPの供給源として利用する事もできます。乳酸と聞くと「疲労物質」としてのイメージが強いのですが、そうして大量のグリコーゲンを消費した状態になると、乳酸もエネルギーとして利用し、少しでもエネルギーを補おうとします。ただし運動中におけるその場でのATPの供給には間に合わず、時間がかかってしまいます。



★無酸素運動を行うメリットについて考えてみよう

●無酸素運動は身を守るために必要なもの

無酸素運動とは、文字通り酸素を使わずに行う運動(筋肉を動かす事)の事です。そのように聞くと、そもそも酸素を使わずに筋肉を動かす事なんてできるのか?と疑問を持ってしまいますが、実は日常生活において、無酸素運動が必要な場面というのはたくさんあります。

これは少し極端な例ですが、例えば不意に崖の上から大きな岩が落ちてきて、それを咄嗟に避けるというような場合、十分に酸素を吸い、その酸素を使って筋肉を動かしたのではとても間に合いません。それは時には鋭利な刃物だったり、自動車のような質量の大きな物体という事もある訳で、そのような場合、酸素を使う間もなく、素早く筋肉を動かさなければ、時には命を落としてしまう事もあります。

そういった時、酸素を使わずとも筋肉を動かす事ができれば、どのような危険な状況であっても、咄嗟に回避行動に移す事ができます。その結果として命が助かっても助からなくても、その場で何も行動しないよりは少なくとも生存確率を上げる事ができます。無酸素運動の真の役割はそこにあると私は考えています。

よって「無酸素運動が行えるような体の状態にしておく」という事は、自分の命はもちろんの事、自分の身近にいる大切な人の命も守る事にも繋がる可能性がある訳です。その意味でも無酸素運動の役割は非常に重要です。


●無酸素運動の継続による代謝の向上

無酸素運動の中では「筋トレ」が最も身近な運動だと思います。筋トレでは筋肉に対して大きなストレスを与え、そのストレスに抗おうとする事で筋肉の細胞が大きくなり、それに伴って筋力が上がっていきます。そうして筋力が上がると、まず単純に日常的に行う全ての動作が楽になります。つまり今までは自分ではできなかった事ができるようになり、行動の範囲が広がり、それは大きな自信にも繋がります。

またそうして筋肉が大きくなると、筋肉内に蓄える事のできるグリコーゲンの貯蔵量も上がります。これによって無酸素運動の持続時間が上がり、休息を挟めば無酸素運動を何度も繰り返す事ができるようになります。つまり結果として「スタミナ(有酸素運動によるものとは違うが)」も上がり、疲れにくくなります。

更にそうしてグリコーゲンの貯蔵量が上がれば、筋肉が「糖の逃げ道」として機能するようになり、血糖値を抑制できる可能性もあります。特に高血糖は血管を詰まらせ、細胞の機能を低下させたり、血管を老化させ、動脈硬化など様々な病気に繋がると言われています。つまり筋トレのような無酸素運動を行えば、それを予防する事ができる訳です。また余った糖はいずれ脂肪として蓄積してしまいます。無酸素運動を行えば糖が糖である時に燃やす事ができるので、新たな脂肪の蓄積を防ぐ事もできます。つまり無酸素運動は肥満予防にも繋がる訳です。

そして前述したように、無酸素運動ではクレアチンリン酸・グリコーゲンによるATP生産、クレアチン・クレアチンリン酸の合成、グリコーゲンの合成、解糖系やクエン酸回路などによるATP生産などが起こり、糖が代謝が活性化されます。またクエン酸回路では脂肪酸もATPにする事ができるので、実は脂肪の代謝も活性化されます。更に筋肉は蛋白質なので、当然蛋白質の代謝も活性化されます。

つまり無酸素運動を習慣化及び継続する事では、運動中に行われるエネルギー代謝の効率が上がるのはもちろんの事、運動を行っていない間の「基礎代謝」も大きく向上する事になります。


●筋トレを効率良く行うために重要な事

私は中学生の頃、友達同士で懸垂や腕立て伏せなどの回数を競い合った記憶があります。そのように「筋トレは回数が多い方が凄い」という考えを持っている中高生は未だに多いのですが、それは大きな間違いです。

まず筋トレによって筋肉を大きくするためには、筋肉に対して大きなストレスを与える必要があります。何十回、何百回と反復する事ができるという事は、それだけ筋肉に与えるストレスが小さいという事であり、当然そのような筋トレは筋肥大には適しません。また何十回、何百回と繰り返す事で、運動を行っている時間自体も長くなっているはずで、そのような筋トレは「無酸素運動」にすらなっていない可能性があります。無酸素運動は前述のように「短時間で大きな力を発揮するような運動」の事であり、そのような「低負荷・高反復・長時間」となる筋トレはとても効率が良いとは言えません。

無酸素運動の仕組みを理解すれば、どのような方法で筋トレを行えば、効率良く筋肉を鍛える事ができるか、という事が分かります。中高生などでそこに気づく事ができれば、「運動」という言葉に対する考え方はもちろんの事、これから先に得られる運動に関する知識の種類も大きく変わってきます。またそれによっては時間を効率良く使えるようになり、浮いた時間を、別の知識の習得や技術の習得などに充てる事ができます。






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