怪我をした際に行うアイシングの方法について考える

この記事では怪我をした際に行うアイシングの方法について簡単にまとめています。ご興味のある方は下記「続きを読む」よりどうぞ。

※当記事作成日時:2013-12-12、最終更新日時:2019-12-05

★当記事の目次

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●そもそもアイシングとは?何のために行う?

例えば不意に足首を捻ってしまった時には、関節付近にある筋肉、腱、靭帯、骨、血管、軟骨、皮膚など様々な組織が損傷しています。もし血管が損傷していれば内出血を起こして血液が溜まり、損傷した細胞などがあれば老廃物として蓄積します。またしばらくすると損傷した細胞を修復しようとして血液や栄養素が集まり、修復の際の反応を促進させるために温度も上昇します。そうして新陳代謝を促し、できるだけ素早く患部を修復しようとします。

しかし必要以上にその反応が行われると、損傷していない健康な細胞にまで範囲が広がってしまい、逆に治るスピードが遅くなってしまう事があります。特に運動中のような「運動をするのに適した状態」での怪我では、ただでさえ血流が促進されている状態なので、そのままだと腫れや痛みが悪化しやすいです。そこで「アイシング」を行います。アイシングによって患部の温度が下がると血管が収縮し、血流が抑えられます。これにより患部で起こる反応を遅らせ、痛みや腫れなどを最小限に抑える事ができると言われています。

ちなみにアイシングは怪我をした直後から行うものと、運動後のクールダウンの際に行うものとで方法が変わります。クールダウン時に行うアイシングはごく短時間ですが、怪我をした直後から行うアイシングでは、基本的に2〜3日程度は冷やし続ける必要があります。またその間は安静が必要です(詳しくは後述)。



●アイシングで重要な「RICEの法則」とは

特に怪我をした直後のアイシングでは「RICEの法則」という方法で患部を冷やす事が基本と言われています。RICEという4文字はそれぞれ英語の頭文字を取ったものであり、Rが「Rest」、Iが「Ice」、Cが「Compression」、Eが「Elevation」という意味を持っています。下記ではそれぞれを簡単に説明します。


・RICE処置のR(Rest)

最初の「Rest(レスト)」は「安静」を意味しており、アイシングを行う際には運動を行ったりはせず、安静状態にしておく必要があります。患部は損傷をしたその瞬間から修復するための反応が始まっており、血流があまりにも促進されるとその反応が過度に行われ、周囲にある健康な細胞にまで範囲が広がってしまう事があります。それでは逆に治りが遅くなってしまうため、アイシングの際には安静が必要です。また固定して患部が動かさないようにする事も重要になるでしょう。


・RICE処置のI(Ice)

2番目の「Ice(アイス)」ですが、これはその名の通り「冷やす」という意味があります。患部を直接冷やす事で血管を収縮させ、血流を抑え、そのように患部で起こる反応を抑えます。また内出血を伴う場合、それを最小限に抑える事も目的としています。ただし冷やし続ける事では温度が下がりすぎて、実は「凍傷」になるリスクもあります。タオル越しに当てるなど様子を見ながら冷やすべきです。


・RICE処置のC(Compression)

3番目の「Compression(コンプレッション)」ですが、これは「圧迫」という意味があります。患部の腫れは表面的に見れば体の外側に向かって盛り上がっているように見えますが、実際には体の奥の方向や横の方向など立体的にも範囲が広がっています。せっかく冷やしているのに、それでは血管が広がってしまい、血液の流入量を抑える事ができなくなってしまいます。また内部に出血を伴っている場合、患部が広がると出血の量も増えてしまいます。それではやはり治りが遅くなります。そこで怪我をした直後は患部に多少の圧迫を与え、範囲が広がらないようにすると共に、出血を抑える事が重要です。

ただし怪我の程度によっては患部の熱や腫れなどの「逃げ道」も必要になり、テーピングや包帯などで圧迫する際、一部分に隙間を作るなどの工夫が必要になる場合もあります。特にあまりに強く圧迫すると鬱血してしまうので、緩める強さを調節したり、定期的に緩めたりする事も必要です。これにはある程度の技術や経験も必要であり、素人考えで安易に強く圧迫すべきではありません。


・RICE処置のE(Elevation)

最後の「Elevation(エレベーション)」ですが、これは「挙上」を意味しています。前述のように患部の血流が速いと範囲が広がってしまい、怪我の治りが遅くなってしまう事があります。よって患部は心臓よりも高く挙げる事が重要になると言われています。例えば足なら寝た状態になって上半身よりも少し上に来るようにし、腕なら座った状態で胸より少し上に来るようにすると良いでしょう。



●怪我の際に行うアイシングの時間及び期間

怪我をした直後のアイシングでは、最低でも2〜3日程度は患部を冷やし続ける必要があります。体重をかけた時の痛みの程度はもちろん、特に「平常時の痛み(何もしていなくても痛い・熱い・重いなど:特に修復が促進される睡眠時)」を基準に冷やし続けましょう。ただし患部で起こる様々な反応は本来「治そう」として起こる正常な反応です。アイシングの目的は「反応を起こさない事」ではなく「これ以上範囲を広げない事」「反応を遅らせる事」にあるので、ただ単に冷やし続けるだけだと血流が滞ったままになり、それはそれで治りが遅くなってしまいます。

そこで、痛みや腫れが引いてある程度経ったら、常温に置く時間を設け、それをアイシングと交互に行うようにします。少しずつで良いので、少しずつ常温の時間を増やしていき、逆にアイシングの時間は少しずつ減らしていくようにする訳です。もちろん最初は常温の時間は短く、アイシングを長めに行いますが、最終的には睡眠中だけ冷やすようにしていきます。常温の時間を増やすペース及びアイシングの時間を減らすペースは、自分の体と相談しながら上手く調節しましょう。

それができたら、今度は常温にしていた時間に「温める時間」を設け、それをアイシングと交互に繰り返すようにします。当然最初の温める時間は短く、アイシングを長めにし、これも少しずつ温める時間を増やしていくようにします。そうして最終的にはやはり睡眠中だけ冷やすようにする訳です。患部を温める場合の温度としては40度の手前程度の温度が良いと思われます。

もちろんこれもそのように「自分の体の反応を見て上手く調節する」事が重要です。特に患部の温度が上がり、血流が促されると、それによって痛みや腫れが再発する可能性もあるため、本当に少しずつ行うようにします。もし温めても痛みや腫れが出ない場合、それらと並行し、可動域・柔軟性・筋力などを元に戻すためのストレッチあるいはトレーニングも合わせて行っていきます。それが病院などで行ういわゆる「リハビリ(リハビリテーション)」と呼ばれるものです。ただし病院では通常温める事はしません。温めるのはあくまで私の考えによるものであり、少なくとも病院での治療を受けている間は、このような勝手な事はすべきではありません(笑)



●復帰までにはどのぐらいの時間がかかる?

スポーツ選手が怪我をした場合、現場に復帰するまでの期間は、怪我の種類及び程度によって大きく異なります。例えば筋肉に関する怪我は早くて数週間、靭帯に関する怪我は早くて1〜2ヶ月、骨に関する怪我(ヒビや小さな骨折)は早くて2ヶ月程度となります。ただしいずれも軽度の場合の話であり、重度の場合、いずれも数ヶ月かかる事になります。また神経に関する怪我の場合、それ以上に長い期間が必要になる事が多いです。

この内、筋肉に関する怪我は、軽度であれば手術は必要ない事が多いです。大抵は数週間で治ります。また手術を要するような重度の怪我でも、これらの中では比較的治りやすい方です。何故筋肉の怪我は治りやすいかというと、これは単純に血管が多いからです。ただし完全に断裂してしまったり、あるいは元が小さな筋肉や細い筋肉だったりすれば、当然治りは遅くなります。特に特定の動作に関わる重要な筋肉ほど、リハビリに要する期間は長くなります。尚、筋肉ほどではありませんが、骨も血管が多いため、小さな骨の骨折程度なら比較的治りやすい部類に入ります。大きな骨の骨折の場合、折れる場所や折れ方が特殊な場合、軟骨が損傷した場合などでは、数ヶ月〜半年あるいはそれ以上かかる事もありますが、完治は十分に可能です(靭帯の損傷などを一緒に伴っている場合もあるので一概には言えない)。

一方、靭帯や神経に関する怪我では、もし完全に断裂した場合、自然には殆ど再生しません。必ず手術が必要になると思っておいた方が良いでしょう。特に神経の場合、手術したとしても完全には治らない事があります。また靭帯の場合も馴染むまでに非常に長い時間がかかり、その違和感から復帰できずにそのまま引退という可能性もゼロではありません。当然復帰までには1年あるいはそれ以上かかるでしょう。更に部分的な断裂の場合でも、血流が悪く治りが非常に遅いため、手術が必要になる事の方が多いです。そのため例え軽度の損傷であっても、既にそのスポーツで仕事をしているのなら、決して軽視すべきではありません(捻挫程度の怪我でも放置すると、損傷した靭帯が緩んで癖になる。それにより別の大きな怪我に繋がる可能性もある。即病院へ行き早期の治療が必要)。非常に厄介な怪我なので最低限の予防も必要です。

重度の怪我になるほど、復帰するまでの間、段階を踏んだ非常に長い期間でリハビリを行う事になります。簡単に流れを説明しますが、手術→冷やす→冷やす・常温の繰り返して様子見→患部より遠い場所から順に機能回復→患部の機能を徐々に回復していく→それぞれの機能を怪我をする前まで戻す→怪我をする以前を上回るようにして復帰を目指す・・・といった感じです。軽度の怪我ではこれを短い期間で、重度の怪我では非常に長い期間で少しずつ行う事になります。


ただしリハビリは本来、専門的な知識及び資格を持つ人しか指導する事ができないものであり、素人が見様見真似で勝手な事をすると、そのように悪化してしまう可能性があります。特に物理的な大きな損傷があれば、場合によっては手術が必要になる事もあり、それは個人の力だけではどうにもなりません。怪我をしたら程度に関わらず、必ず整形外科へ行き、お医者さんの指示を聞きましょう(可能ならばレントゲンだけでなく「MRI撮影」もできるような病院を選ぶと良い)。