筋肉の収縮様式について理解しよう

筋肉を効率良く鍛えていくためには、筋肉に対して一定以上の大きなストレスを与える必要があります。しかし筋肉はその収縮の仕方によって数種類に分ける事ができ、どのように筋肉を動かせばより大きなストレスを与える事ができるかを理解してから行う事で、より効率的なトレーニングが可能になります。この記事ではそんな「筋肉の収縮様式」について私なりにまとめています。ご興味のある方は下記「続きを読む」よりどうぞ。

※当記事作成日時:2013-07-29、最終更新日時:2019-12-09

★当記事の目次

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★アイソメトリック・コントラクション(等尺性収縮)について

例えば人間の力では到底動かす事ができないような、地面に固定されている大きな壁を両手で前へ押そうとします。当然この時、その壁は全く動きませんが、前へ押そうとしているので腕などの筋肉は収縮して力を発揮しています。つまり骨や関節に動きが伴っていなくても、筋肉は収縮させて力を発揮する事ができ、そのような筋肉の収縮の事を「アイソメトリック・コントラクション(等尺性収縮)」と言います。

このアイソメトリックを利用したトレーニングの事を「アイソメトリック・トレーニング」と言います。通常の筋トレではダンベルやバーベルなどを持ち上げたり戻したり・・・という事を繰り返します。つまり関節には動きがあり、体を動かしながら筋肉に大きな負荷を与えます。一方、アイソメトリックを利用したトレーニングでは関節に動きが伴いません。つまり力を発揮した状態で体を静止させる事になるため、自分の力加減や体重によって筋肉に与える負荷の大きさを変える事ができます。また道具が必要ないので、自分の体があれば場所を選ばずどこでもできます。これが大きなメリットになります。

特にアイソメトリックを利用したトレーニングには、例えば「胸の前に手を合わせ、自分の手と手で押し合う、あるいは引き合う」「椅子に座った状態で片方の足を前へ出し、床から浮かせ、膝を伸ばした状態で静止させる」「腹筋の動作において、45度ぐらいの角度でキープする」「単純に壁を背にして空気椅子を行う」などの方法があります。また前述した壁を押す例のように「地面に固定された物(壁や床など)」があれば、それをトレーニングをするための道具にする事もできます。つまり工夫次第で様々な筋肉、様々なトレーニング法が考えられ、自分でトレーニング法を開発する事もでき、別の意味での楽しさがあります。


尚、アイソメトリックを利用したトレーニングを行う際に特に重要になるのが、「筋肉に対して最も負荷がかかる角度(体勢によって大きく変わる)」を探し、その角度付近で一定時間キープさせる事です。肘や膝ならだいたい90度(直角)が理想で、力を発揮したまま、その角度で動かずに止まるようにしましょう。また前述のように自分の力加減によって負荷の大きさが変わるため、アイソメトリックを利用したトレーニングで大きな負荷を与える場合、目一杯に力を入れる必要があります。その際、顎を強く噛み締めたり、呼吸を止めるなどして力まないように注意しましょう。血圧が上がって大変危険です。

またアイソメトリックを利用したトレーニングでは、前述のように重たい重量を扱う事はできません。そのため今の自分の筋力、及び今の自分の体重以上の大きな負荷を与える事ができず、こればかりを行っていると、いずれトレーニング効果が頭打ちになってしまいます。よってアイソメトリックを利用したトレーニングは基本的に他のトレーニングと合わせて行うべきであり、アイソメトリック単独で行うべきではありません。



★アイソトニック・コントラクション(等張性収縮)について

前述のアイソメトリックと似ていてややこしいのですが、ここで説明するのは「アイソメトリック」ではなく、「アイソトニック」です。このアイソトニックではアイソメトリックとは違って関節に動きを伴う筋肉の収縮の事で、筋肉にかかる負荷に対し、釣り合うようにして筋肉が伸び縮みする事になります。

簡単に説明すると、例えば肘を伸ばした状態で力コブを作ってみます。この時、最初の肘を伸ばした状態では、腕の筋肉(腕の表側にある上腕二頭筋)は脱力して伸ばされていますが、そこから肘を曲げていくと腕の筋肉(上腕二頭筋)が縮んで力を発揮し、縮んだ部分が盛り上がって力コブができます。つまり肘を伸ばした状態と肘を曲げた状態とでは、「上腕二頭筋が縮んだり伸ばされたりして長さが変わっている」という事が言えると思います。そのような収縮の事を「アイソトニック・コントラクション(等張性収縮)」と言います。

尚、このアイソトニックには「コンセントリック・コントラクション(短縮性収縮)」と「エキセントリック・コントラクション(伸張性収縮)」という二つの収縮の方法があります。簡単に説明すれば、コンセントリックは伸ばされていた筋肉が縮みながら力を発揮し、結果として関節が曲がるような収縮の事、エキセントリックは縮んでいた筋肉が力を発揮したまま伸ばされ、関節に動きを伴うような収縮の事を言います。



●コンセントリック・コントラクション(短縮性収縮)について

コンセントリックは前述の例にある「腕を伸ばした状態から力コブを作る」時のように、「筋肉が縮む際に力を発揮する収縮」の事を言います。手にダンベルを持って力コブを作ろうとすれば、ダンベルを持ち上げていく際、腕にある上腕二頭筋が収縮します。この時の上腕二頭筋は、筋肉が縮みながら力を発揮しており、その筋力はダンベルの重さと釣り合っています。その収縮こそ「コンセントリック・コントラクション(短縮性収縮)」です。

一般的な「筋力トレーニング(いわゆる筋トレ)」では、殆どの方法でこのコンセントリックを利用しています。メリットとしては、そのように単に「筋肉が収縮する時に大きな力を発揮する」ようにして体を動かせば良いという点です。そのため「どのように体を動かせば、どの筋肉が使われるか」という事が分かっていれば、トレーニングの方法自体はそこまで難しくありません。

ただし筋肉に与える負荷は、大きすぎるとアイソメトリックのように関節に動きがなくなってしまい、逆に小さすぎると筋肉は効率良く成長してくれません。筋肉に大きな負荷を与える場合、ダンベルやバーベルなどの道具を使う必要がありますが、その重量は今の自分の筋力に合わせて調節する必要があります。そのためにはある程度の経験が必要です。



●エキセントリック・コントラクション(伸張性収縮)について

一方、エキセントリックは「筋肉が伸ばされる時に力を発揮する収縮」の事を言います。しかし前述の例のように、単に力コブを作った状態から腕を伸ばしても、それはエキセントリックにはなりません。

例えば右の肘を曲げて力コブを作り、左手でその右手首を掴みます。その状態から左手で「右肘を伸ばす」ように力を加え、力コブを作っている右腕はその左手の力に抵抗するようにします。両手の力を上手く調節し、右腕と左手の力が釣り合うようになったら、今度は「左手の押している力にギリギリ負ける」ようにして右腕の力を弱めていき、左手によって少しずつ右肘を伸ばされていくようにします。そうして最終的に右の肘は左手によって完全に伸ばされます。

そのような動作を行う場合、右腕の上腕二頭筋は伸ばされていくにも関わらず、収縮して力を発揮しています。つまり「筋肉が伸ばされながら収縮して力を発揮している」という状態になっており、実はこれこそが「エキセントリック・コントラクション(伸張性収縮)」なのです。


そのようなエキセントリックを利用したトレーニング法を「エキセントリック・トレーニング」と言います。例えばコンセントリックを利用した通常のトレーニングでは、筋肉を縮ませて大きな力を発揮した後、筋肉を伸ばして脱力していきます。その筋肉が伸ばされる際、「負荷に対して抵抗するようにして、少しずつ伸ばされていく」ように行う事で、実は通常のトレーニングでもエキセントリックを起こさせる事ができます。これにより筋肉を縮ませる時だけでなく、伸ばす際にも筋肉にストレスを与える事ができ、トレーニング効率が向上させる事ができます。

一方、エキセントリックを利用したトレーニングにはデメリットもあります。通常の筋トレの方法では稀な事ですが、意図的にエキセントリックを起こさせようとして、敢えて大きな重量を扱い、例えば不注意で床に足が引っかかったり、指にバーベルが引っかかったりした場合、意図しないエキセントリックが起こる事もあります。実は筋肉が「肉離れ」を起こすきっかけの多くは、そうした「意図しないエキセントリックが起こる事」と言われています。想像してみて下さい。全力で力を入れている筋肉が、いきなり予期せぬ強い力で引き伸ばされたらどうなるのかを。その筋肉は縦や横に激しく切れてしまうでしょう。

よって安全にエキセントリックを取り入れたトレーニングを行うためには、重量の大きさをいつもより少し抑えたり、反復回数・セット数・頻度などを調節する必要があります。また意図的にエキセントリックを起こさせるために大きな重量を扱う場合、誰かに補助してもらう必要があるでしょう。



★アイソキネティック・コントラクション(等速性収縮)について

アイソキネティックは簡単に言えば「筋肉の収縮を行う際の速度が常に一定なもの」の事を言います。つまり機械のように、ひたすら同じスピードで収縮を繰り返すのが「アイソキネティック・コントラクション(等速性収縮)」です。

例えば一定の速度で上下動するバーベルがあるとします。そのバーベルを手で掴んで首の後ろへ乗せ、常にバーベルを上に持ち上げようとスクワットをしてみます。するとそのバーベルは常に一定の速度で動いていますから、バーベルが下へ移動する際にはそのバーベルに抵抗するようにして力を入れる事になるため、大腿四頭筋(太ももの前にある筋肉)で「エキセントリック」が起こり、反対にバーベルが上へ移動する際には、通常のスクワットと同じように大腿四頭筋で「コンセントリック」が起こります。

つまりバーベルが同じ速度で上下に移動していて、それを常に持ち上げようとする場合、大腿四頭筋に対して「エキセントリック」と「コンセントリック」が交互に起こり、それが常に一定のスピードで繰り返される事になります。また速度自体は一定ですが、バーベルに対して抵抗する際の自分の力加減によって、筋肉に与えるストレスの大きさを変える事もできます。少し難しいのですが、実はこれがアイソキネティックを利用したトレーニングの特徴です。

また今度は、一定の速度で上下に動くバーベルを「常に下へ下げようと力を入れる」ようにしてみます。すると、バーベルが下へ移動する際には、ハムストリングス(太ももの裏側にある筋肉)で「コンセントリック」が起こり、バーベルが上へ移動する際にはハムストリングスで「エキセントリック」が起こります。つまりハムストリングスでコンセントリックとエキセントリックが交互に起こる訳です。アイソキネティックではこのように「自分が力を入れる方向を変える」だけで、別の筋肉を鍛える事もできます。

更に、バーベルが下へ移動する際には下へ引くようにし、バーベルが上へ移動する際には、逆に上へ持ち上げるようにしてみます。つまりバーベルの上下動に合わせ、力を入れる方向を変えるという事です。すると、バーベルが下へ移動する際には、ハムストリングスで「コンセントリック」が起こり、バーベルが上へ移動する際には、大腿四頭筋で「コンセントリック」が起こります。つまり「ハムストリングスも大腿四頭筋も鍛える事ができ、かつエキセントリックを起こさず常にコンセントリックを起こさせる」事ができるのです。

またバーベルが下へ移動する際には上へ持ち上げようとし、バーベルが上へ移動する時には逆に下へ引こうとします。するとバーベルが下へ移動する際には、大腿四頭筋で「エキセントリック」が起こり、バーベルが上へ移動する際にはハムストリングスで、やはり「エキセントリック」が起こります。つまり「大腿四頭筋もハムストリングスも鍛える事ができ、かつコンセントリックを起こさず常にエキセントリックを起こさせる」事ができるのです。このように上下で力の入れ方を逆にするだけで、筋肉に対して常に同じ収縮を起こさせる事もできます。これもアイソキネティックを利用したトレーニングの特徴です。


ちなみに例えばランニング、腹筋動作、縄跳び、あるいはジャンプ運動をその場で繰り返すドロップジャンプなどのように、「自分の体だけを使って、意識的に、同じ動作を同じ速度で繰り返す」ような運動もあります。しかしそのような運動は、動作を行う回数や時間が増えていくと、動作の速度が一定ではなくなったり、疲労によって動作の速度が遅くなってしまします。つまり単に同じ速度を意識して運動を行っても、それは厳密にはアイソキネティックにはなりません。常に一定の速度でアイソキネティックを行うためには、基本的には「同じ速度で動くようなトレーニング機器」が必要になります。例えばボートを漕ぐような動きをするローイングマシンや、ペダルを漕ぐバイクのようなものがあります。



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