腹直筋・腹斜筋・腸腰筋等を鍛えるためのトレーニング法

この記事では『腹筋(腹直筋・腹斜筋)や腸腰筋(大腰筋・腸骨筋)を鍛えるためのトレーニング法』と、そのトレーニングを行う際の注意点などについて私なりにまとめています。全てをまとめて1つの記事にしているので、かなりの長文になっていますが、ご興味のある方は下記「続きを読む」よりどうぞ。

記事作成日時:2013-08-01、最終更新日時:2019-11-02

★当記事の目次

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★トレーニングを行う際の注意点まとめ

●お腹にある筋肉について簡単に

いわゆる「腹筋」はお腹の中央にある腹直筋と、腹直筋の両サイドにある腹斜筋に分けられます。

例えば仰向けに寝ている状態であれば、腹直筋は上半身を上へ起き上がらせる際に働きます。また立っている状態では体を後ろへ反らせた時、それを戻す際に働き、これによって姿勢を安定化します。一方、そうして背中を丸めた場合、実は腰骨も前へ動いています。つまり腹直筋は下半身や太ももの骨を前に、あるいは上へ引き上げる時にも働いています。

続いて腹斜筋ですが、腹斜筋は体の最も表層にある外腹斜筋と、その内側の内腹斜筋とに分けられます。更にその内側には腹横筋という筋肉があり、この腹横筋は腹直筋の裏まで繋がり、お腹全体を覆っています。特に腹斜筋の中で最も表層にある筋肉は「正面を向いたまま、左右へ体を横へ傾ける時」に働きます。これにより体の横へのブレを抑え、姿勢を安定化させます。一方、内側にある筋肉では呼吸に深く関与します。例えば息を大きく吸うと横隔膜が広がり、それに伴ってお腹が膨らみますが、そのまま広がってしまうと、内部にある臓器の位置がズレてしまいます。更に体が大きく振動した時にも、臓器の位置がズレてしまう事があります。腹斜筋はその際、体の内側から支える事で圧力(腹圧)を高め、臓器の位置を安定化させる役割があります。

尚、腹圧は背骨の動きにも関与しています。背骨は上下が来る衝撃を分散するように湾曲しているのが正常ですが、腹圧が弱くなると、その湾曲が必要以上に大きくなったり、あるいはその湾曲を制御できず、捻りなどの不要な動きが増えてしまいます。よく「腹筋が衰えると腰痛になる」と言われますが、それにはそうして腹圧が低下して支えがなくなり、背骨の動きが悪くなる事が関係しているのです。

ちなみに腹筋はそのように体の中心に位置している関係上、上半身及び下半身で大きな筋力を発揮する場合、大抵腹筋にも力が入っています。つまり腕や足で大きな筋力を発揮するためには「お腹への力の入れ方(腹圧の高め方)を覚える事」と「単純な腹筋の筋力の強化」も重要になると思われます。一方、それは逆に言うと、意識的な運動習慣があるのに腹筋が鍛えられていない場合、「体が上手く使えていない(変に力む、腕や足だけで力任せ・効率が悪い、それぞれの部位が連動していない等)」という事が言えると思います。今一度、体の使い方を見直すべきでしょう。



●腹筋は元々誰でも割れている

前述のようにお腹の正面には「腹直筋」と呼ばれる大きな筋肉がありますが、実はその縦や横には「腱」という結合組織が走っています。腱は腹筋を上から押さえつけるような形になっており、腹筋を鍛えて筋肉が大きくなってくると、腱と腱の隙間から筋肉が盛り上がるようにしてはみ出してきます。それによって筋肉の盛り上がった部分と凹んでいる部分(腱)に差ができ、凹凸として見た目にもはっきりと分かるようになります。それで「腹筋が割れている」ように見える訳です。

一方、腱は見た目では一つ一つのブロックを区切るような形になっていますが、その一つ一つが独立した筋肉という訳ではありません。あくまで割れているように見えるだけであって、実際には一枚の筋肉です。そのため腹筋では上側を「上部」、下側を「下部」などという分け方をする事もあるのですが、例え上部を主に鍛えるトレーニングであっても、上部だけを使っている訳ではなく、実際には下部及び腹筋全体に負荷がかかっています。またこれは側面にある腹斜筋も同様で、腹斜筋だけを鍛えるようなトレーニングは存在しません。腹斜筋を鍛えようとすれば腹直筋も同時に働きます。

この事から言えるのは、やはり「腹筋が鍛えられていないという事は、そもそも体を上手く使えていない」という事が言えると思います。筋肉を鍛える事よりもまずは体の使い方を練習すべきでしょう。


ちなみにですが、そのように腹筋のブロック一つ一つを区切っている腱、実は上下左右の位置関係は生まれつき決まっています。つまり脂肪を落として筋肉を大きくし、腹筋を割れさせたとしても、それが「上下左右対称」で「綺麗に6つに割れている」とは限りません。腱が斜めに走っている事もありますし、腱が左右で互い違いになっているなど左右非対称の場合もあります。こればっかりはそのように一旦目に見える形で割ってみない事には分かりません。このため「腹筋を割ったときの見栄え」には生まれつきの要素も大きく関係しています。

一方、腹筋を割ろうとする場合、大抵の人が単に食事制限をして「脂肪を減らして腹筋を割ろう」とします。確かに脂肪が落ちれば腹筋の凹凸が目立ちやすくなりますが、残念ながらそれだけでは綺麗に腹筋は割れてくれません。

これは腹筋に限った事ではありませんが、筋肉は大きなストレスを与える事で肥大化します。つまり単に脂肪を落とすだけではなく、腹筋にストレスを与える事ができるようなトレーニングを行う必要があります。特に腹筋ではとりわけ「腹筋動作をひたすら繰り返せば良い」と勘違いしている人がたくさんいますが、回数をこなす事ができるという事は、それだけ1回1回のストレスの大きさが小さいという事であり、そのようなトレーニングでは腹筋は大きくなりません。例えば重りを抱えて行ったり、動作間で脱力しないように行ったり、筋肉が伸ばされる時にゆっくりと戻したりなど、短時間で大きなストレスを与える事ができるようなトレーニングを行いましょう。



●腸腰筋とは?鍛えるメリットについて

腹直筋の更に奥深く、特に背骨の付近には骨盤から太ももの骨を繋いでいる「腸骨筋」という筋肉と、背骨・骨盤・太ももの骨とを繋いでいる「大腰筋」や「小腰筋」という筋肉があり、それらの筋肉を合わせて「腸腰筋」と呼びます。ちなみにこれらの中では大腰筋が最も大きく、役割として重要ですが、実は小腰筋はない人もいるそうです。

この腸腰筋、そのように背骨・骨盤・太ももの骨を繋いでいる筋肉で、特に上半身を前へ傾ける際に働きます。つまり基本的には腹直筋や腹斜筋などと一緒に働く筋肉で、やはり背骨や骨盤のブレを抑える役割があると言われています。これによっては上半身と下半身が上手くリンクするため、運動を行う際、効率良く力を伝える事ができるようになります。

また腸腰筋は骨盤を上から引っ張る事で、骨盤自体を「前傾」させる役割もあります。骨盤が前傾すると、太ももの骨を後方へ引く際の筋肉を上手く使えるようになり、お尻にある大臀筋や太ももの裏側にあるハムストリングスなどの筋肉が発達します。そのため腸腰筋が発達すると、足の運びが速くなり、歩幅も広がるため、様々な運動能力が向上します。競技にもよりますが、スポーツを行っている人では「選手としての能力」に直結するほど重要な筋肉です。

その他、そうして骨盤が前傾すると、体を横から見た時、お尻のトップの位置が斜め上方向へ移動します。これにより骨格的にお尻が大きく見え、ウエストとの差を強調する事で、いわゆる「クビレ」を作る事ができます。それによって骨格的に太い部分と細い部分の差、すなわち体の凹凸がよりはっきり出るようになり、いわゆる「グラマー体型」に見せる事ができるようになります。


尚、腸腰筋は体の奥深くに位置している事から、いわゆる「インナーマッスル」などと呼ばれる事もあります。しかしそのように太ももの骨を持ち上げる関係で、歩く、走る、階段を登るなど日常的に使われており、実は太くて大きな筋肉です。また前述のように腸腰筋(小腰筋・腸骨筋・大腰筋)は単独で働く訳ではなく、基本的にはお腹にある腹直筋や背中にある広背筋、更には太ももにある大腿四頭筋やハムストリングスなどと一緒に働いています。この記事では主に腹筋を鍛える種目を紹介していますが、つまり腹直筋など他の筋肉を鍛えようとすれば、自然と腸腰筋にも刺激が入る事になります。



●背中の筋肉もバランス良く鍛えよう

いわゆる「腹筋動作」を行って体を起こしていく際には、お腹にある腹直筋が収縮し、同時に背中にある背筋が伸ばされています。一方、その時、勢いに任せて腹筋を急激に収縮させた場合、背骨が許容できる可動域を超えてしまう事があります。背筋はその際に腹筋の動きをセーブする役割があり、それによって背骨への負担を軽減する事ができます。そのため腹筋を鍛える場合、背筋も一緒に鍛えていく事が重要です。

またそうして腹筋を急激に収縮させた時、もし背筋がスムーズに伸ばされない場合、逆に背筋が腹筋のスムーズな収縮を邪魔してしまう可能性も考えられます。素早い動作ほどそれはパフォーマンスの低下に繋がります。よって腹筋が効率良くその筋力を発揮できるように、背筋の柔軟性を高めるようなストレッチあるいはトレーニングも並行して行っていくべきでしょう。

尚、脊柱は神経が密集している重要な組織であり、その損傷は絶対に避けなければなりません。いわゆる腹筋動作で起き上がる際には、無理に背中を曲げたりしないように注意しましょう。一方、自分で可動域をセーブして行う事では、腹筋に対して効果的にストレスを与えられず、トレーニング効率が下がってしまう可能性もあります。その場合、一つの種目に拘らず、様々な方法でストレスを与える事が重要です。



★腹直筋を鍛えるためのトレーニング法

●腹筋を鍛える前の準備トレーニング(初心者向け)

最初に紹介する方法は、背中を伸ばしたまま腹筋に力を入れたり、腹筋に力を入れたまま意識的に呼吸を行うための練習法です。本格的なトレーニングを行う前に、まずはこれを行って腹筋への力の入れ方や呼吸の仕方を覚えておくと良いでしょう。

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まずは仰向けに寝た状態になり、両膝を90度程度に曲げ、両足を揃え、その足の裏を床へピッタリとつけます。上半身を起き上がらせるようなトレーニングではこれが「基本の形」になります。上半身を起き上がらせる際には足を固定した方が行いやすいように思いますが、足を固定すると前述のように太ももにある筋肉を使ってしまうので、できるだけ腹筋だけを使うためにフリーにしておく事をオススメします。また上半身を勢い良く起こすと、起こすその瞬間にしか筋肉が収縮しない上、腹筋に負荷がかからない角度まで進んでしまうので、そうして足をフリーにする事で「敢えて起き上がりにくい状態」で行った方が良いと思います。


・息を吸いながらお腹を膨らませる練習

そのような基本の形になったら、お腹に両手を当て、息を吸いながらゆっくりとお腹を膨らませていきます。ここではまだ「息を吸う時にお腹を膨らませる」という事を行うだけです。もし意識的にお腹を膨らませるのが難しいという人は、お腹の正面にある何かをお腹で押し潰すようなイメージで行うと分かりやすいと思います。そうしてまずは「息を吸いながらお腹をゆっくりと膨らませる→ゆっくりと脱力して元の状態に戻る」という事を繰り返します。

・息を吐きながらお腹をへこませる練習

それがスムーズにできるようになったら、今度は息を吐きながらゆっくりとお腹をへこませていきます。つまり前述の逆を行うわけです。ここでもまだ「息を吐く時にへこませる」だけです。ゆっくりと少しずいつ息を吐いていけば、自然とお腹はへこみます。そうして「息を吐きながらお腹をゆっくりとへこませる→ゆっくりと脱力して元の状態に戻る」という事を繰り返します。

・腹式呼吸の練習

前述の方法を交互に繰り返します。つまり「息を吸いながらゆっくりとお腹を膨らませる→息を吐きながらゆっくりとお腹をへこませる」という事を繰り返します。これがいわゆる「腹式呼吸」です。スムーズにできるようになるまで練習しましょう。

・息を吸いながらお腹をへこませる練習

今度は息を吸いながらゆっくりとお腹をへこませてみます。ここではまだ「息を吸う時にお腹をへこませる」という事を行うだけです。もし意識的に行うのが難しいという人は、息を吸いながら声を出すようなイメージ(驚いた時のような感じ)で行うとやりやすいと思います。そうしてまずは「息を吸いながらお腹をゆっくりとへこませる→ゆっくりと脱力して元の状態に戻る」という事を繰り返します。

・息を吐きながらお腹を膨らませる練習

そして今度はその逆で、息を吐きながらゆっくりとお腹を膨らませてみます。ここではまだ「息を吐く時にお腹を膨らませる」という事を行うだけです。もし意識的にお腹をへこませるのが難しいという人は、息を少しずつ絞り出すようにして吐くイメージで行うと分かりやすいと思います。そうしてまずは「息を吐きながらお腹をゆっくりと膨らませる→ゆっくりと脱力して元の状態に戻る」という事を繰り返します。

・呼吸とお腹の動きを反対にする練習

前述の方法を交互に繰り返します。つまり「息を吸いながらゆっくりとお腹をへこませる→息を吐きながらゆっくりとお腹を膨らませる」という事を繰り返します。これは腹式呼吸とは異なり、呼吸とお腹の動きを反対にする練習です。スムーズにできるようになるまで行いましょう。

・呼吸とお腹の動きを不一致させる練習

今度は呼吸のスピードとお腹を上下動させるスピードを一致させない練習を行います。つまり呼吸は意識的に速く行いますが、お腹はできるだけ遅く上下動させるようにしたり、呼吸を意識的に遅く行って、お腹はできるだけ遅く上下動させるようにします。呼吸とお腹の動きが完全に異なるものになり、ここまでスムーズにできるようになると、「お腹に力を入れながら呼吸を止めずにトレーニングを行う」事ができます。

・練習を行う際の注意点について

呼吸を意識的に行う際、限界まで息を吐いたり、呼吸をゆっくりと行い過ぎたり、あるいは息を吐く際に強く力むと、人によっては一時的に酸欠・貧血・高血圧等になってしまう場合があります。このトレーニングは力まずにお腹へ力を入れ、かつお腹に力を入れたまま呼吸をスムーズに行うようにする事が主な目的ですので、そのようなやり方は間違っています。基本からやり直しましょう。

ちなみにここで説明した方法を応用し、例えば口にペットボトルなどを咥えながら前述のようなトレーニングを行う事もできます。またそれは肺活量アップ・横隔膜のストレッチ・呼吸法(腹式呼吸)改善等を目的に、ボイストレーニングとして行われる事もあります。前述の方法ではゆっくりと呼吸とお腹の上下動を行いましたが、それを素早く行ったりする事で、呼吸に関わる筋肉を刺激する事ができます。その他、お腹周りの筋肉を様々な方向へ伸ばすようなストレッチも合わせて行うと良いでしょう。



●クランチ/シットアップ

仰向けに寝た状態から体を起こすいわゆる「上体起こし(腹筋動作の事)」では、腹直筋をそのまま縦に曲げ伸ばしする事ができ、腹直筋を鍛えるトレーニング法として基本的な方法の一つです。尚、明確な基準はありませんが、便宜上この記事では腹筋の上側だけを使って行う上体起こしの事を「クランチ」、ほぼ完全に近い形で体を起こす上体起こしの事を「シットアップ」と言います。つまりクランチとシットアップとでは体を起こす角度の大きさが異なるという事です。

ここではクランチを例にして説明していきます。スタート時の体勢は上記の方法と同じです。仰向けに寝て、膝を90度に曲げ、両足を揃え、その両足の裏を床へつけておきましょう。両手は頭の後ろに持ってきますが、首への負担を軽減するだけで、腕はできるだけ脱力しておきます。その状態になったら、床から肩甲骨(肩の後ろ側)を少しずつ浮かせていきます。反動をつけず、できるだけ腹筋の力だけで起き上がるようにしましょう。そうしてやや緩やかに体を起こそうとすると、肩甲骨より下〜お尻までは床へついたままになりますが、クランチでは完全に体を起こす必要はなく、最も負荷のかかる角度まで行ければ良いのでそれで問題ありません。

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またそうして体を起こしていく際には首や背中を丸めすぎないように注意します。これは神経の密集している脊柱への負担を抑えるためです。この他、足を少し浮かせたまま、あるいは何か台に乗せたまま行う事では、特に腹直筋の上部に効かせる事ができる上、可動させる範囲が狭くなる事で腰への負担が更に減ります。ただし「クランチ」ではあるので、「太ももは全く動かさない」ように注意します。太ももと胸を引きつけるようにして行う方法も一応はあるのですが、ここでは必要ありません。

そうして体を起こしていくと「これ以上は反動をつけないと持ち上がらない角度(45度の手前)」まで来ると思います。そこまで来たら筋肉に力を入れたまま5秒キープします。少ししか起き上がる事ができなくても、腹筋に力が入っていればそれで十分です。特にここでは前述した「準備トレーニング」が役に立ちます。筋肉に力を入れたまま、力まず意識的に呼吸を行う訳です。そうしてキープができたら、ややゆっくりと体を戻していきます。

ただし起こしていた体を戻す際には、起き上がる時以上に集中して行います。特に筋肉は「伸ばされながら力を発揮する」時に大きなストレスを与える事ができ、より効率的なトレーニングになるので、「できるだけ負荷に耐える」「脱力させない」ようにして戻しましょう。また戻す際に肩甲骨を完全には床へつけず、ギリギリつくかつかないかの所で切り返します。そうして筋肉が伸び切った時もできるだけ脱力させないようにして、再び起き上がる動作へ移行させます。

この「ややゆっくりと起き上がる→ややゆっくりと戻す」を1回とし、筋肥大を目指すのであれば1セットが10〜15回程度になるような負荷に設定、あるいは力の入れ方を調節し、休憩を上手く挟んでそれを2〜3セット行います。何十回何百回と繰り返す事ができる場合、負荷が足りないか筋肉の使い方で楽をしています。腹筋動作では回数を重ねるほど良いと勘違いしている人は多いのですが、そのようなトレーニングでは筋肥大はあまり望めず、回数を重ねるほどに無駄が大きくなります。負荷を増やし回数は抑えるべきでしょう。尚、もし負荷を増やしたい場合、胸の前にダンベルやバーベル用のプレート、あるいは水か砂を入れたペットボトルなどを抱えながら行ったり、シットアップベンチを利用し、上半身を少し下へ傾けた状態(腰の高さよりも頭が下になる)で行うと良いと思われます。

ちなみにシットアップで起き上がる際も、必ずしも「完全に起き上がり切る」必要はありません。重要なのは筋肉に大きなストレスを与える事であり、起き上がった時に筋肉が緩んでしまったり、あるいは背中を床につけた時に筋肉が緩んでしまうと、回数を重ねるほどに無駄が大きくなります。足を固定すれば完全に起き上がる事も可能ですが、それだと足の筋肉を使って起き上がる事ができてしまうので、やはり「脱力せずに行う(起き上がった際に意識的に収縮、伸ばした時にも意識的に収縮させる)」という事が重要です。

この他、シットアップで起き上がる際、右肩を左太ももへ、左肩を右太ももへ近づけるように起き上がる方法もあり、これによって脇腹にある腹斜筋にも多少刺激を与える事ができます。ただし起き上がってから一気に捻るのではなく、斜め方向に起き上がるようにします。いきなり捻ると腰痛になる事があるので注意しましょう。



●リバース・クランチ

リバースクランチは単純にクランチの逆を行います。つまり上体を起こすのではなく、足を上げ下げする事で腹直筋を鍛えるトレーニング法です。ただし「クランチ」ではあるので、大きく足を上げ下げする必要はなく、「お尻をゆっくりと床から浮かせる→ゆっくりと戻す」という事を繰り返すトレーニングになります。

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スタート時の基本的な体勢は前述したクランチと同じです。更にその状態で、「お尻〜太ももの骨〜膝(体を横から見た時の骨のライン)」が床と垂直になるように足を床から浮かせ、膝の重さがちょうど股関節の上に乗っているような状態(お尻から先の足全体が宙に浮いているが、膝から下は動作間でも常に脱力させておく)にしておきます。

その状態になったら、膝を天井に近づけるようにして、床からお尻を少しずつ浮かせていきます。ただし背中は床についたまま行う事になるので、実際には床から僅かにお尻が浮く程度であり、可動させる範囲は決して大きくありません。また無理に膝を高く上げる必要もなければ、背中を大きく丸める必要もありません。重要なのは下腹部を使う「意識」です。そうしてお尻を少しだけ浮かせたら、できるだけ負荷に耐えるようにして、少しずつお尻を床へ戻していきます。ただしお尻は完全には床へつけず、ギリギリのところで留めるようにします。筋肉をできるだけ脱力させず、次のお尻を浮かせる動作へスムーズに移行させましょう。

この「ゆっくりとお尻を床から浮かせる→ゆっくりと戻す」を1回とし、筋肥大を目指すのであれば1セットが10〜15回程度になるような負荷に設定、あるいは力の入れ方を調節し、休憩を上手く挟んでそれを2〜3セット行います。尚、このトレーニングは可動域が小さく、動作の性質上負荷を増やす事が難しいため、本気で行おうと思ったら何十回と繰り返す事ができてしまいます。しかし負荷が小さいという事はそれだけ筋肥大に適していないため、このトレーニングはどちらかと言うと下腹部の動作確認が主な目的になります。そのように何十回と繰り返す必要はありません。筋肥大を目指す場合、前述したシットアップや後述のレッグレイズなどのような「可動域を広く使って行うトレーニング」が必要です。



●レッグレイズ

レッグレイズも足を上げ下げする事で腹直筋を鍛えるトレーニング法です。リバースクランチではお尻を床から浮かせるだけでしたが、レッグレイズでは足を大きく上げ下げします。特に足を伸ばした際には足の重さが全て腹筋へかかる事になるので、腹筋全体へ大きなストレスを与える事ができます。一方、自分の体重だけを使ったトレーニングでも相当大きな負荷になり、フォームも崩れやすく、安定して行うにはある程度の技術及び筋力が必要になります。無理して行うと腰痛になる事もあるので、できない場合は前述したトレーニングや下記にある腹斜筋を鍛えるトレーニングを行いましょう。

スタート時の体勢はやはりクランチとほぼ同じです。そのような体勢になったら、上半身をできるだけ動かさないように注意し、ややゆっくりと両足を床から浮かせていきます。ただし単に足を浮かせるだけでは、股関節や太ももの筋肉を使って足を持ち上げようとしてしまうので、足を浮かせる動作と連動させるようにして「お尻を床から浮かせる」ようにします。これは前述のリバースクランチを参考にします。上半身が動いてしまう場合にはシットアップベンチや柱などを利用し、両手で掴まる事で上半身を固定すると良いでしょう。ただし何かに掴まる場合、腕の筋力は使いません。

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そのまま足を持ち上げながらお尻を床から浮かせていくと、肩甲骨周りだけ、あるいは肩の後ろ側だけが床へついている状態になると思います。しかしそこまで進んでしまうと、支点が腹筋の上に移動してしまい、どうしても腹筋が緩んでしまうので、その寸前で止めるようにします。つまり肩甲骨の少し下辺りまでが床についている状態までで留める訳です。しかし背中全体が床についている状態と比べればバランスは取りづらくなるので、意識的に腹筋へ力を入れ、体のブレをできるだけ抑えるようにします。尚、上げていく膝の方向ですが、これは「やや斜め上方向(天井方向)」へ向くようにします。膝が頭頂部と同じ方向を向いてしまったり、床や自分の顔の方向へ向いてしまうと負荷が減ってしまうので、リバースクランチと同じように膝を天井へ向けるようにしましょう。膝を伸ばす必要はありません。

そのようにしてお尻を浮かせながら足を持ち上げたら、今度はお尻を下げながら、足をできるだけ「遠く」へ、ややゆっくりと下ろしていきます。ここがリバースクランチとの大きな違いです。ただし背中を一旦伸ばしてから足を下ろしたり、お尻を一旦床へつけてから足を下ろすのではなく、背中を伸ばしていく動作・お尻を下げていく動作と、できるだけ連動させるようにして足を下ろすようにします。足を下げていく際、お尻が床につかないように耐えながら行うとより効果的です。

また足は遠くへ下ろすほど腹直筋が伸ばされ、大きなストレスを与える事ができますが、膝を完全に伸ばし切ったり、踵を床へ完全につける必要はありません。そこまで行くと逆に背中を反ってしまったり、股関節の前側にある筋肉を使ってしまったり、上半身を固定している人では力んだり、腕の筋肉を使ったりしてしまうのでそれを防ぐためです。決して無理はしないようにします。

そうして足を下ろしていったら、再び足を持ち上げる動作へと移行させます。その切り返しの際、筋力のない人では反動を使ってしまいますが、それだとやはり腹直筋以外の筋肉を使ってしまうので、できるだけ反動を使わないようにします。それによっては「反動を使わずに行う事ができる範囲内でトレーニングを行う」という事も重要になるでしょう。腹直筋に刺激が耐えられればそれで良く、腹直筋を鍛えるトレーニング法は他にもあるので、何度も言うように決して無理をする必要はありません。

この「ややゆっくりと足を上げる→ややゆっくりと戻す」を1回とし、1セット10〜15回程度になるように負荷を増やす、あるいは力の入れ方を調節し、休憩を上手く挟んでそれを2〜3セット行いましょう。尚、このトレーニングは自分の体重だけでも大きな負荷になるため、筋トレを始めたばかりだったり、元々筋肉量が少ない人などでは、今の自分にとって「回数を重ねる事ができないほど大きな負荷」となっている場合もあります。それが原因で逆に筋肥大に適したトレーニングにならない事もあるので、その点には注意すべきです。まずは負荷の小さなトレーニングから開始し、ある程度慣れてから行うと良いでしょう。

また筋力のある人でも、当然何十回何百回と繰り返す必要はありません。それだけ反復できるという事は負荷が足りていないか、力の入れ方やフォームなどどこかで楽をしている可能性が高いので、今一度その辺りをチェックしてみましょう。もし負荷を増やしたいのであれば、両膝の間にダンベルやバーベル用のプレート、または水か砂を入れたペットボトルなどの重りを挟んで行ったり、シットアップベンチなどを利用し、下半身を少し下へ傾けた状態(頭の高さよりも腰が下になる)にしたり、あるいはぶら下がった状態で行うと良いかもしれません。



★腹斜筋を鍛えるためのトレーニング法

●サイド・クランチ

クランチやシットアップでは正面を向いたまま体を起こしますが、サイドクランチでは体全体をやや斜めにした状態で、斜め上方向へ体を起こします。これにより腹斜筋へ刺激を与える事ができると言われています。

基本的なスタート時の体勢はクランチとだいたい同じなのですが、サイドクランチでは左右の脇腹のどちらかが上なるよう、少しだけ体を斜めにして行います。つまり背骨を中心とした「半身」だけが床についているような形になります。この時、例えば右の脇腹が上の場合には左半身が床についており、右手で頭を支え、左手で右の脇腹を触ります。逆に左の脇腹が上の場合には右半身が床についており、左手で頭を支え、右手で左の脇腹を触る事になります。

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その状態になったら、できるだけ反動を使わないようにして体を起こします。右の脇腹が上になっている場合、右肩を右太ももへ近づけるようにして起こし、左脇腹が上になっている場合、左肩を左太ももへ近づけるようにして体を起こします。できるだけ脇腹の筋肉だけを使うように意識し、背中を少しだけ屈め、そのように肩を太ももへ近づけるようなイメージで体を起こしましょう。体を大きく捻る必要はありません。

そうしてこれ以上は反動をつけないと持ち上がらない角度まで起き上がったら、そこで5秒程度キープさせます。特にサイドクランチは可動させる範囲が狭いため、そのように静止させる事でやや持続的に筋肉へ刺激を与える必要があるのです。ここでも前述した「準備トレーニング」が役に立ちます。筋肉に力を入れたまま、力まず意識的に呼吸を行うようにしましょう。そうしてキープができたら元の体勢へ戻っていきます。この際も勢いに任せて戻すのではなく、できるだけ負荷に耐えるようにしてゆっくりと戻すようにし、できるだけ脱力させないように起き上がる動作へ移行させます。

この「起き上がる→ややゆっくりと戻す」を1回とし、1セット15回程度、多くて30回程度になるように力の入れ方を調節、休憩を上手く挟んでそれを左右それぞれ2〜3セットずつ行いましょう。

ちなみにこのサイドクランチは体をやや横向きで行う関係で、シットアップのように大きく体を起き上がらせる事はできません。つまり可動させる範囲が狭く、負荷を増やす事も難しいので、筋肥大には適していません。また無理に勢い良く体を起こしたり、動作の途中で一気に体を捻ったりすると、背骨やその周囲にある組織に大きなストレスがかかり、それが腰痛の原因になる場合もあるので注意しましょう。基本的に腹斜筋だけを鍛えるトレーニングは存在しません。腹直筋に負荷がかかるトレーニングでも腹斜筋に多少負荷がかかっているので、色んなトレーニングを行うべきです。



●サイド・レッグレイズ

サイドレッグレイズは横這い、あるいは体をやや斜めにした状態で、天井方向へ足を上げ下げするトレーニング法です。

では方法を説明していきます。スタート時の体勢はレッグレイズとほぼ同じですが、サイドレッグレイズではそのように横這い、あるいは体をやや斜めにした状態から始めます。例えば右の脇腹が上になる場合には左半身が床についており、左手で頭を下から支え、右手で右の脇腹を触ります。逆に左の脇腹が上の場合には右半身が床についており、右手で頭を下から支え、左手で左の脇腹を触ります。体の下側だけが床についている状態なので、バランスは非常に取りづらいです。上になっている方の手は床についてバランスを取るか、シットアップベンチを利用し、それに掴まって行うと良いかもしれません。

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その状態になったら、上半身をできるだけ動かさないように注意しながら、ややゆっくりと両足を床から浮かせていきます。「サイド」なので、足の側面が天井方向へ向くようにして足を上げる事になります。ただし単に足を浮かせるだけでは、股関節や太ももの筋肉を使って足を持ち上げようとしてしまうので、足を浮かせる動作と連動させるようにして、少しだけ「お尻を床から浮かせる」ようにします。前述のように背骨にとって無理な動作になるので、実際には「お尻を浮かせる意識」だけでも十分です。

また膝の方向に注意すべきです。スタート時点の体勢が横這いなら膝は横(頭と同じ方向)を向いたまま、体が斜めなら斜め上を向くはずです。動作間で膝の方向が変わってしまうという事は、無意識に途中で捻っている可能性があります。背骨への負担を最小限に抑えるため、膝は常に体と同じ方向を向いているように意識しましょう。個人的にですが、完全な横這いよりも体を斜めにした状態で行った方が、足は上げやすいと思います。

そうして足を上げたら、後はレッグレイズと同じように、足を遠くへ、ややゆっくりと下ろしていくだけです。ただしお尻が先に床についてから足を下ろすのではなく、お尻を下げていく動作と連動させるようにして足を下ろすようにします。また動作間では必ずしも膝を伸ばす必要はありません。膝を伸ばすと足を上げづらくなる事があるので膝は曲げたままでも構いません。そうして足を下ろしたら再び足を持ち上げる動作へ移行させます。反動をできるだけ使わずに切り返しましょう。

この「足を上げる→ややゆっくりと戻す」を1回とし、1セット10〜15回程度になるよう負荷を増やすか、力の入れ方を調節し、休憩を上手く挟んでそれを左右それぞれ2〜3セットずつ行いましょう。尚、本来なら大きく足を上げ下げした方が良いのですが、横這いになっている関係上、可動域を広くすると背骨にとって大きなストレスになります。反動を使って勢い良く足を上げたり、動作の途中で腰を捻ったりすると、腰痛などの怪我の原因になったり、臓器の不調に繋がる事もあるため、決して無理をする必要はありません。



●サイドベンド

サイドベンドは立った状態、座った状態、あるいは横這いに寝た状態で、正面を向かせたまま、上半身を左右に倒して行うトレーニング法です。いずれの体勢でも正面を向いて行う関係上、できるだけ腹直筋を使わずに動作を行う事ができます。そのためサイドクランチやサイドレッグレイズよりも、よりピンポイントに腹斜筋へ刺激を与える事ができます。

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ここでは立った状態で行う方法を紹介します。まず姿勢を正して正面を向き、足を肩幅に開いて立ちます。その状態になったら正面を向いたまま、左右どちらか一方へ、ややゆっくりと体を傾けていきます。左に傾ける場合、下半身が右の方向へ動いてしまわないようにします。右に傾ける場合、下半身が左へ動いてしまわないように注意します。そのように下半身を固定して行うと、お腹が支点となって左右に曲がるような形になり、上になっている方の脇腹に負荷がかかります。ただしあまりに大きく体を曲げたり、無理に体を捻ったりすると背骨に大きなストレスがかかるため、傾ける角度はせいぜい45度程度です。

そうして体をややゆっくりと傾けたら、ややゆっくりとスタート時に戻していきます。サイドベンドではこれを繰り返す事になる訳です。ただしスタート時まで完全に戻してしまうと、腹斜筋に全く負荷がかかっていない状態になってしまいます。そのため完全には体を戻さず、その手前で止め、敢えて意識的にお腹に力を入れます。その状態から再び体を傾ける動作へ移行するようにしましょう。

この「体をややゆっくりと傾ける→ややゆっくりと戻す」を1回とし、1セット10〜15回程度になるように負荷を増やすか、力の入れ方を調節し、休憩を上手く挟んでそれを左右それぞれ2〜3セットずつ行いましょう。負荷を増やしたい場合、ダンベルやバーベル用のプレート、または水か砂を入れたペットボトルなどの重りを、下側になっている方の手に持ちます。また横這いの状態で行う場合、腰骨から先の上半身を宙に浮かせた状態で行うと良いでしょう。ただしやはり背骨には負担がかかるので決して無理をすべきではありません。



★腸腰筋を鍛えるためのトレーニング法

腸腰筋は基本的に腹直筋、広背筋、大腿四頭筋、ハムストリングスなどの筋肉と一緒に働きます。特に太ももの骨を持ち上げる際、骨盤を傾ける際、背骨を前へ倒す際などに使われているので、実は前述のようなトレーニングでも一緒に鍛える事ができます。よって腸腰筋だけをピンポイントで鍛えるようなトレーニングは存在しません。一方、前述したトレーニングでは基本的に床などに寝た状態で行う必要があり、場所を選びます。ここで紹介する方法は場所を選ばずに行う事ができるトレーニング法で、床に座った状態はもちろん椅子に座った状態や立った状態でも行う事ができます。

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ここでは立った状態で行う方法を説明します。まず足を肩幅に開き、姿勢を正して立ちます。左右どちらの足でも良いので床から浮かせ、膝を曲げ、膝から先は脱力させておきます。その状態になったら、背中を丸めないように注意しながら、股関節が軸になるようにして、反動をつけずに膝を持ち上げていきます。

ただしそれだと単なる「腿上げ(ももあげ)」になってしまうので、その膝を持ち上げるのと同時に、上半身の方も股関節を軸にして前へ倒し、胸と太ももをお互いに近づけるようにします。そうして背骨を前へ倒す動作と太ももの骨を持ち上げる動作を同時に行う事で、より腸腰筋へ刺激を与える事ができます。またややゆっくりと行うとより効果的です。

それを行ったら、同じようにして太ももと胸を互いに遠ざけます。つまり股関節を軸にして倒していた上半身を少しずつ起こしていき、それと連動させるようにして膝も下ろしていきます。決して背中を反ったりせず、やや緩やかに戻していくようにしましょう。また戻す際には足を床へつける必要はなく、途中で止め、反動をつけずに切り返します。

この「膝と胸をややゆっくりと近づける→ややゆっくりと遠ざける」という動作を1回とし、自分の体重だけで行う場合には1セット20〜30回程度、それを休憩を挟んで左右それぞれで2〜3セット行いましょう。負荷を増やす場合には1セット10〜15回程度にし、例えば膝の少し上付近に重りを固定して行うと良いと思われます。尚、ここではやや緩やかに太ももを上げ下げしていますが、もちろん素早く太ももを上げ下げする方法もあります。フォームがコントロールできる人ではそれを行ったり、あるいは正面ではなく左右に開くようにして太ももを上げ下げするなど、トレーニングに変化をつけるのも良いでしょう。

ちなみに腸腰筋は他のトレーニングでも自然と働いている筋肉で、例えばフロントランジ、踏み台昇降、スクワット、デッドリフトなどでも、股関節を軸にして上半身を前へ倒す事で刺激を与える事ができる上、日常的な動作でも、例えば素早く歩く、素早く走る、素早く跳ぶ、素早く階段を登るなどを意識的に行う事で十分鍛える事が可能です。「腸腰筋は日常的に使われている筋肉」という認識を持ち、普段から使っておくようにしましょう。



●腹筋のスピードトレーニングについて

前述してきたトレーニング法は全て「ややゆっくり力を入れる」「ややゆっくり伸ばす」という事が基本です。しかしそのような「力を余計に消耗するような力の入れ方」は実生活ではあまり使わず、素早い動作を求められるような動作では不向きです。そのような力の入れ方に癖がついてしまうと、いざという時に体が動かない事があります。特にボクシングなど打撃系の格闘技では重要です。また運動時には「筋肉が単独で力を発揮する」事の方が珍しく、トレーニングに慣れていくと、やはりいざという時に他の筋肉との連動が上手くいかず、効率良く体を動かす事ができないという可能性もあります(これは筋肉自体の問題ではなく体の使い方の問題)。

そこで上記のトレーニングを「瞬間的に力を入れて曲げ伸ばしする」「瞬間的に脱力して伸ばす」というように行ったり、あるいは腹筋だけでなくその他の様々な筋肉も一緒に収縮させるようなトレーニングを行う事も、人によっては必要となる場合があります。そのような特定の動作スピードの向上を目的とするトレーニングを行う場合、低負荷かつ高反復が基本です。筋肥大にはあまり適していませんが、同じトレーニングをしているとモチベーションの維持が難しくなる事があります。フォームや可動させる範囲がコントロールできるのであれば、それらを行って変化をつけるのも悪くありません。

ちなみに通常のウェイトトレーニグを継続する事で、基本的な筋力が向上すると、スピードトレーニングで扱う事のできる重量の大きさも増やす事ができます。よく「ウェイトトレーニングは筋肉が固くなる」「筋トレをすると怪我をしやすくなる」だとか言われますが、そのようにスピードトレーニングだけでは効率の良い筋肥大は望めないため、いずれ効果が頭打ちになってしまう可能性があります。スピードトレーニングを行う場合、それ単独ではなく、高負荷・低反復の筋肥大を目指すようなトレーニングも合わせて行うべきです。



●腹筋のネガティブトレーニングとは?

前述した腹筋動作では、基本的に床に寝た状態から上半身を起こし、腹直筋を収縮させる際に負荷をかけて行います。「ネガティブトレーニング」ではその動作を逆にし、体を起こした状態から床へ戻し、その際に腹直筋を伸ばしながら行います。ただし単に腹直筋を勢い良く伸ばしても意味はなく、重力あるいは負荷にできるだけ耐えながら、やや緩やかに伸ばすようにします。

そのように行うと、腹直筋では「負荷に対して抵抗し、収縮して力を発揮しながらも、結果としてその負荷に負けて伸ばされる」という収縮が起こります。このような「筋肉が伸ばされながら力を発揮する収縮」の事を「伸張性収縮:エキセントリック・コントラクション)」と言います。通常のトレーニングでは筋肉を収縮させる際に負荷をかけますが、このトレーニングではそのように伸ばされる時に負荷をかけます。これにより通常のトレーニングよりも筋肉へ大きなストレスを与える事ができると言われています。前述してきたトレーニングで「ややゆっくりと」と言っているのもこのためで、ネガティブトレーニングでは敢えてそれだけを行う訳です。

方法を説明しますが、より安全な方法は誰かパートナーの人に押してもらって行う事です。例えばクランチで説明すると、腹直筋に最も負荷がかかる角度で起き上がった状態で、両肩を押してもらい、自分は腹直筋の筋力でその押される力に抵抗します。しかし結果としてはその押される力に負け、少しずつ腹直筋が伸ばされ、背中が床につくようにします。これを数秒かけてゆっくりと行う事で、ネガティブトレーニングを行う事ができます。

尚、そのようにパートナーの人の力を借りて行う場合、1セットの回数は通常のトレーニングと同じ程度でも問題ありません。ただしお互いの力加減によって負荷の大きさが決まり、その負荷の大きさによって回数も決まるので、言葉で言うのは簡単ですが、実際にはかなり難しいです。

ちなみにこのネガティブトレーニングは、その方法さえ分かってしまえば、他の筋肉を鍛えるトレーニング法でも行う事ができます。また熟練者ではパートナーの手を借りず、今の自分の筋力以上の重量(持ち上げる事ができないギリギリの重量)を扱い、その重さによってネガティブな収縮を引き起こさせるという事もできます。ただしあまりに大きな重量を扱うと怪我のリスク(収縮していた筋肉が、外部からの力で無理やり引き伸ばされたらどうなるか考えれば分かる事です。当然筋肉は裂けます。)が高くなるので個人的にはオススメしません。