投球の組み立て方・攻め方・配球を考える

この記事ではジャイロボールに限らず、試合での「投球の組み立て方」について私なりにまとめています。ご興味のある方は下記「続きを読む」よりどうぞ。尚、当記事に書かれた内容は理論に基づいたものではありません。私が勝手に考えた「個人的な考え方」であり、実戦で役に立つとは限りません。あくまで参考程度に留めておく事を強くオススメします。
(記事作成日時:2013-06-16、更新日時:2019-03-23)

野球11

★当記事の目次

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球種を球速ごとに分けて考えてみる

まずは球種を球速ごとに分けて考えてみます。

例えばバックスピンストレートが150km/h前後、上投げ、右投げのピッチャーの場合、
●150km/h前後のストレート系
・フォーシーム、カットボール、ツーシーム、ワンシーム、ゼロシーム
●140km/h台の変化球
・シュートボール、縦のスライダー、スプリット、フォークボール、ジャイロボール
●130km/h台の変化球
・横のスライダー、シンカー、パワーカーブ(ナックルカーブ等)
●130km/h前後〜それ以下の球速の変化球
・チェンジアップ、パームボール
●110km/h前後〜それ以下の球速の変化球
・カーブ、ナックルボール
●100km/h前後〜それ以下の球速の変化球
・スローカーブ、スクリューボール(山なりのシンカー)
人によって球種それぞれの球速は大きく異なりますが、だいたいこんな感じになると思います。

尚、上投げのジャイロボールは、基本的に縦のスライダーなどと同じような扱いで良いと思います。ただし回転軸をずらせば、カットボールやツーシームのように、バッターの手元で動くボールとして使う事はできますし、球速を落とせばカーブのような軌道にもなります。要はそれらを全て分けて別の球種として扱うかどうかという事です。それによって現在自分が持っている球種の数は大きく変わります。

一方、サイドスローやアンダースローなどリリースポイントの低い投法の場合、ジャイロボールは直球として扱う事もできます。リリースポイントが低くなると投げる事ができる球種は変わり、特にスライダー系の球種は投げづらくなりますが、基本的にはただ球速をマイナスするだけで良いでしょう。


球種を変化する方向ごとに分けて考えてみる

続いて変化する方向でも球種を分類をしてみます。
●ストレート系(真っ直ぐ、曲がらない、落ちない)
・フォーシーム
●スライダー系(利き腕と逆方向に曲がる)
・横のスライダー、縦のスライダー、カットボール
●カーブ系(利き腕と逆方向に曲がりながら落ちる)
・パワーカーブ、カーブ、スローカーブ
●フォーク系(縦に真っ直ぐ落ちる)
・チェンジアップ、パームボール、スプリット、フォークボール、ナックルボール、ジャイロボール
●シンカー系(利き腕と同じ方向に曲がりながら落ちる)
・シンカー、スクリューボール、ツーシーム
●シュート系(利き腕と同じ方法に曲がる)
・シュートボール、ツーシーム、ワンシーム、ゼロシーム
同じ球種でも人によって変化する方向は大きく異なりますが、だいたいこのような感じになるかと思います。

ただしシンカーとシュートは厳密には区別できません。日本では「落ちる方がシンカー」という分け方をする場合が多いのですが、シンカーやシュートはストレート系に含まれる事もあるため、利き腕と同じ方向へ曲がる球種は、とりあえず現時点では「シンカー系」でまとめて良いと思います。実際メジャーリーグではそのような分け方になっています。尚、そのように同じシンカーでも回転軸や握りによって変化は異なりますが、よっぽど大きな違いがない限り、実際の試合の中では、投げる度にピッチャー側が決めても特に問題はないでしょう。プロのピッチャーでは同じシンカーでも2〜3種類投げ分けている選手もいますが、全てをキャッチャーとサイン交換している選手はほぼいません。

またスライダーやカーブも厳密に区別できない場合があります。基本的には球速が遅く、山なりの軌道を描きながら、斜めに落ちる方がカーブになりますが、最近では球速のある直線的なカーブも出てきており、そのようなカーブはカットボールや縦のスライダーのような変化をする場合もあります。まぁ投げる本人がスライダーと言えばスライダーですし、カーブと言えばカーブなので、やはり、とりあえずは変化する方向で分けると良いでしょう。

ちなみにアンダースローではジャイロボールの落ちる変化を抑える事ができるので、ストレート系として扱う事ができます。もちろん回転軸の傾きや球速を調節すればカットボールやシュートボールとして扱う事もできます。ただしアンダースローでは利き腕とは逆方向に曲がるようなスライダー系やカーブ系の球種を投げる事が難しいです。投げる事ができたとしても横への変化量が小さいので、少し変化するカットボールや山なりのカーブのように扱う事になるでしょう。

一方、サイドスローやアンダースローで投げる落ちる変化球は、そのまま投げるとシュート回転が加わるため、ストレート系でもシュートやシンカーのような変化をする事が多いです。これについても、それをシンカーとするか、シュートとするか、あるいは球速を落としたチェンジアップとするかなどは、あらかじめ決めておく必要があるでしょう。


自分の投球スタイルについて考える

そうして自分の球種を把握したら、現在投げる事ができる球種の中でも、どの球種が得意で、その中でもどの球種が試合で通用し、また通用する球種の中で、実際に自分はどの球種で勝負していきたいか・・・という事を考えます。つまり「自分の投球スタイル」を決める訳です。

特に投球スタイルの基準になるものとしては、
1.球速の出るストレート系を主体とするか、球速の出る変化球を主体とするか、球速の出ない変化球を主体とするか
2.ゴロを打たせてアウトを取るか、フライを打たせてアウトを取るか、三振を積極的に奪いに行くか
3.一番自信のある球種を投球中に織り交ぜるか、要所要所に限って使うか、連続して投げるか、最後の最後に切り札として使うか
4.ピッチャーが投げたいように投げるか、キャッチャーのリードに従うか
5.常に一定した自分の投球スタイルに基づいて投げるか、相手によって投球スタイルを変えるか
6.相手の得意な球種・コースで打ち取るか、相手の苦手な球種・コースで打ち取るか
7.投球フォームは常に一定か、タイミングを変えたり、リリースポイントを変えて投げるか
例えばこのような事を基準にし、どのように投球を組み立てていくかを考えると良いでしょう。

尚、球速が出るからと言ってストレート系の球種が主体になるとは限りません。ストレート系以外にも絶対の自信を持っている球種がある場合、それを主体にした投球もできるからです。また日本では「ゴロを打たせて取る」と「三振を奪う」事を分けて考えますが、相手バッターや状況に応じて両者を使い分けられるのであれば、その方が成績は安定します。例え絶対の自信がある球種を持っていても、敢えてそれを軸にせずに投球をしたり、あるいは自分の投球スタイルを固定化しないような投球もできるはずです。確かに「奪三振」は魅力的ですが、自分の球速、球種、コントロールなどには、それが合わない場合もあるのです。

ただしそうして投球スタイルに幅を持たせるためには、球速、球種、変化、スタミナ、コントロール、投球フォーム、メンタル、対応力、判断力、データなど、ピッチャーとしての基本的な能力が必要不可欠です。練習やトレーニングなどもそれに合わせて改善していく必要があるでしょう。ときうにそれらは「今後選手としてどのように成長していくか」という事にも大きく関係してきます。特定の部分に秀でているピッチャーを目指すのか、バランスの良いピッチャーを目指すのか、あるいは全てを極める事を目指すのか(現在はこれ、次はこれ、というように順番に能力を鍛えていくのか)・・・それによって現在の投球スタイルも大きく変わる場合があります。長期的に見る事が重要です。


実際にどのようにして投げていけば良いか

例えば「ランナーがいない場合」に、どのコースに、どの球種を投げれば良いかを考えるとすると、以下のようにアウト数、ストライク数、ボール数によって攻め方が変わります。
ランナーの有無 アウト数 ストライク数 ボール数
ランナーがいない時 0アウト 0ストライク 0ボール
1ボール
2ボール
3ボール
1ストライク 0ボール
1ボール
2ボール
3ボール
2ストライク 0ボール
1ボール
2ボール
3ボール
1アウト 0ストライク 0ボール
1ボール
2ボール
3ボール
1ストライク 0ボール
1ボール
2ボール
3ボール
2ストライク 0ボール
1ボール
2ボール
3ボール
2アウト 0ストライク 0ボール
1ボール
2ボール
3ボール
1ストライク 0ボール
1ボール
2ボール
3ボール
2ストライク 0ボール
1ボール
2ボール
3ボール
つまり「ランナーがいない場合」というだけでも、これだけの組み合わせがあり、それぞれのアウト数、ストライク数、ボール数において、どの球種を使うのか、どのコースに投げるのかは大きく変わってきます。例えばランナーがおらず、0アウトで、0ストライクで、0ボールの状況の時、すなわち初球はどの球種をどのコースに投げるのか、また初球がストライクになったら次は何を投げるのか、逆にボールになったら何を投げるのか・・・といった感じです。実際にはランナーがどの塁にいるかや、点差、あるいは短期決戦などによっても細かく分けられます。2ストライク後にファールによって粘られたり、牽制球を挟んだりすれば組み合わせは無限に増えていきます。

また初球を投げた結果としてのストライクとボールだけではなく、その際のバッターの反応によっても次の攻め方は大きく変わります。例えばストライクにしてもボールにしても、見逃したのか、空振りをしたのか、ファールになったのか、それはどのような見逃し・空振り・ファールであったのかなどですね。更にそれがその試合での初対戦の場合、元々どういうタイプのバッターなのかも重要です。最近では過去のデータを元にして戦うデータ野球が主流です。前述したようなランナー・アウト・ストライク・ボールの有無それぞれの状況で、どのようなバッティングをするバッターなのか、何が得意で何が苦手なのかによって攻め方は変わってきます。

その他、1巡した後の2打席目以降の場合、それまでの打席での内容を把握した上で、どのようなピッチングをすべきかを考える必要があります。またそれ以外の他のバッターで、中心に攻めた球種やコースも考慮に入れる必要があります。例えば2番バッターで内角を中心に攻めたら、その攻め方は次の3番バッターも見ている訳で、その3番バッターの攻め方にも影響するという事です。

尚、実際には「打たれた場合」も考慮に入れる必要があります。打ち取り方(ライナー・フライ、ゴロ、三振、バント失敗、ゲッツー、刺殺、盗塁失敗)はもちろん、ヒットのされ方(ゴロ・ライナー・ホームラン)、塁の出方(四死球・振り逃げ・エラー)、点の入り方(スクイズ・ヒット・ホームラン・犠牲フライ・エラー)などによっても狭方は変わるという事です。ただのゴロアウト、ただのヒットであっても「どのボールで?」という事が重要なのです。

その他、前の試合での対戦内容(自分以外のピッチャーとの対戦内容も含まれる)、ここ数日やその日の自分・相手の調子(調子が良いのか悪いのか)、審判の傾向(ここまでがストライクでここまでがボールで、外が広い、内が狭い、高低は甘めなど)、球場の雰囲気(短期決戦などは特に)などによっても攻め方は変わる場合があります。日本では「アウトローが良い」という事ばかりしきりに言われますが、続けて投げれば必ず打たれます。アウトローを重視するとしても、このように、それに至るまでの攻め方は多種多様なのです。

ちなみにですが、バッターの得意・不得意には以下のようなものがあります。
・初球の得意・不得意
・2ストライクで追い込まれた時の得意・不得意
・1ストライク2ボールでの得意・不得意
・3ボールの時の得意・不得意
・ランナーの有無やランナーの数による得意・不得意
・その打席中での得意・不得意:毎球ごとに切り替えるタイプか、その打席全体の結果を元に予想するタイプか、来た球に対応するタイプか
・前の打席・前の試合での結果による得意・不得意:毎打席・毎試合ごとに切り替えるタイプか、それとも前の結果を元に分析するタイプか
・ストライクゾーン枠内の得意・不得意:内外、高低、前後、ゾーン内の選球眼
・ストライクゾーン枠外の得意・不得意:内外、高低、前後、ゾーン外の選球眼
・球速・球種の得意・不得意:速いボール、遅いボール、横の変化、縦の変化、球速差
・その他:アッパースイング・レベルスイング、流すタイプ・引っ張るタイプ、ゴロ・フライ・バントの得意・不得意など

これらは「どの状況の時、どのようなバッティングをするか」という、いわゆる「データ」というもので、キャッチャーやベンチにいるスタッフなどに、ある程度は任せる事ができます。もちろんこれは自分に対しても言える事で、自分のデータも自分で把握する事が重要です。ピッチャーはただでさえ1試合での責任が大きいポジンションのため、勝利に執着するあまり、これらの事を全て考えようとするとオーバーヒートしてしまいます。一個人でできる事には限界があるので、決して全て自分で考えようとする必要はありません。考える事はできるだけ最小限に抑え、分担できる所は分担した方が良いでしょう。