指を固定する力と手首を固定する力

当ブログでは、
「握力」と「指を固定する力(以下、指の固定力)」、
「手首を曲げる力」と「手首を固定する力(以下、手首の固定力)」は、
区別して考えています。

ピッチャーにとっては握力や手首を曲げる力よりも、
「指の固定力」「手首の固定力」の方が重要なのです。
それについて書きます。 
 
 
球速を上げていくと、
腕の振りによってボールが遠心力で外側へ移動しようとします。
それを指と手首によって固定する事が必要です。

ボールを指によって固定できないと、
しっかりと力が伝わる前に指からボールが離れてしまい、
スッポ抜けたり、高めに浮きやすくなり、
低めにコントロールする事が難しくなります。

また、手首は通常、前腕部と真っ直ぐになる必要がありますが、
ボールの重さに引っ張られると左右前後にブレてしまいます。
手首を回してみると分かりますが、本当に色んな方向に動く関節です。
投球時に大きな力がかかる手首は元々動きやすいのです。

この指のブレと手首のブレが細かなコントロールに大きく影響します。
ですので、指と手首によるボールの固定が必要なのです。

特にジャイロボールを投げる上では必要不可欠です。
上投げでジャイロボールを投げる場合、
ボールの横を下へ擦るようにしてジャイロ回転をかけます。
ので、球速を上げていこうとするとどんどんスッポ抜けやすくなります。

アンダースローでは多少マシにはなりますが、
球速、スピン量、コントロールを全て両立するためには、
やはり指と手首でボールを固定する必要があるのです。



では、何故そのように区別するかを説明します。
まずは握力と指の固定力について。

「握力」は読んで字の如く「握る力」ですので、
「ボールを握る強さ」の握力と「ボールを固定する」指の力は違います。

例えば日本球界に在籍していたマーク・クルーン選手。
彼は160km/前後の豪速球を投げる事ができますが、
握力は意外にも50kg前後しかありません。

握力が強くても指の固定力が強くない人はいますし、
逆に握力が弱くても指の固定力が強い人もいます。
つまり、握力と指の固定力とでは、
「力の使い方が違う」という事が言えると思います。

よって、ボールを握る力がいくら強くなったとしても、
それによって球速が上がるという事は必ずしも言えません。
そもそも投球時に強くボールを握る事はほとんどありませんからね(笑)

投球においては握力を鍛える事よりも指の固定力を鍛えて、
腕の振りの速さに耐えられるようにした方が、
球速、コントロール、球持ち、スピン量が改善されます。

加えて指の固定力を強くするには、指を開く力も鍛える必要があります。
「固定」なのでボールを前後左右にブレさせない事が重要だからです。
「指を開く力」なんてほとんどの人が意識した事はないと思います(笑)

もちろん、そうやって指の固定力を鍛えようとすれば、
必然的に握力は上がりますが、
握力は投球時にはそれほど重要なものではありません。
「固定」が重要なのです。



続いて、手首を曲げる力と手首の固定力について。
この2つの力は基本的には関係しており、
手首を曲げる力が強ければ、手首の固定力も強くなります。

ただし、投球時の手首は腕の振りと連動し、
ボールが放たれた後に「自動的に」曲がるようになっています。
しかも手首を意識的に曲げると逆に球速が遅くなってしまうのです。

ですので、手首を「曲げる」と「固定する」は全く違うものです。
曲げる力が強くても投球時に使われないのでは意味がありませんし、
腕の振りの速さに耐えられるよう手首の固定力を強くした方が、
球速、コントロール、球持ち、スピン量が改善されます。

加えて手首の固定力を強くするには、
手首を曲げる力に加えて伸ばす力も鍛える必要があります。
ボールを前後にブレさせない事が重要だからです。
更に手首はあらゆる方向へ動かす事ができる関節ですので、
左右にぶれさせない事も重要になります。

もちろん、そうやって手首の固定力を鍛えようとすれば、
必然的に手首を曲げる力も伸ばす力も強くなりますが、
手首の曲げ伸ばしは投球時にはそれほど重要なものではありません。
「固定」が重要なのです。



以上の通りです。
重要なのは腕の振りによる遠心力でボールが外側へ移動しようとするのを、
指の固定力、手首の固定力でボールを正しい位置に「固定」する事です。

固定する事で指が前後左右へブレなくなりますから、
ボールを細かくコントロールする事ができるようになります。
また、スッポ抜けにくくもなり、
低めへコントロールする事ができるようになります。

握力や手首を曲げる力を鍛えても球速が上がる訳ではありません。
何度も言いますが、重要なのはボールを固定する事です。
その辺は誤解のないようにお願いします。

最後にちょっと余談になりますが、「握力」と「手首を曲げる力」について。

この2つの力は投球時においては、
それほど重要ではないという事は前述した通りなのですが、
「握力」と「手首を曲げる力」に関しても、
実はそこまでお互いに関係がないという事が分かっています。

どういう事かというと例えば、
日本プロ野球外国人選手のアレックス・カブレラ選手。
彼はホームランを量産する長距離バッターで、
打球を遠くへ飛ばすために適した、非常に太い前腕を持っていますが、
実は握力は68kg程度しかありません。

あれだけ太い前腕を持っていれば握力はさぞ強いかと思いきや、
前腕の太さの割に握力はそれほど強くなく、68kg程度ではリンゴも潰せません。
つまり、彼は「手首を曲げる筋肉」が発達しているのであって、
指を曲げ伸ばしする筋肉が発達している訳ではないという事です。
ですから、握力もそこまで強くないのですね。

逆に日本人選手の栗山巧選手は、なんと握力が80kgもあります。
カブレラ選手の前腕と比べると断然細いですが、その握力は球界随一です。
彼はカブレラ選手のような長距離バッターではありませんが、
巧みなバットコントロールでヒットを量産しています。

それだけ強い握力があれば、
どんなにバットを速く振ってもバットをコントロールする事ができますね。
おそらく「ヒットメーカー」と呼ばれる選手の多くが握力が相当強いはずです。

この2人の選手から言える事は、
手首を曲げる力が強い人でも握力は強くない人がいますし、
握力が強い人でも手首を曲げる力が弱い人もいる、という事です。

よく握力を鍛える際に手首を曲げるトレーニングを行う人がいます。
有名なのはリストカール、リバースリストカールですね。
(手にダンベルなどを持って、手首の曲げ反らしをするトレーニング)

この2つのトレーニングを行えば必然的に前腕も大きくなりますが、
手首を曲げ伸ばしする筋肉が鍛えられるのであって、
握力を鍛えるのには非効率という事になります。

握力は読んで字の如く「握る力」です。
ので、握力を鍛える際には手首を曲げ伸ばしする筋肉を鍛えるのではなく、
「握る動作」を行なって、握る時に使う筋肉を主に鍛える必要があるのです。
posted by SaruyaMichael at 21:00 | TrackBack(0) | 筋力トレーニングメニュー集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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