ジャイロボールの球速とスピン量をどう確保するか

ジャイロボールを直球として利用する場合、できるだけ落ちる変化が出る前にキャッチャーへ届かせる必要があります。そのためには球速が必要です。またそれと同時にフォーシームジャイロとツーシームジャイロの特性を活かすためには、スピン量もなければなりません。ここでは球速とスピン量を確保する方法について私なりにまとめています。ご興味のある方は下記「続きを読む」よりどうぞ。
(記事作成日時:2012-12-06、更新日時:2019-03-24)

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何故ジャイロボールに球速とスピン量が必要なのか

バックスピンストレートではボールを上から下へ擦る事でスピン量が上がり、ボールを前に押し出す事によって球速があります。つまりスピン量を上げるための体の使い方と、球速を上げるための体の使い方はある程度一致しており、ボールに伝える際の力のロスは少なくて済みます。だからこそ、全ての球種の中で最も球速が出るのです。

一方、ジャイロ回転をかけるためには、上投げの場合、ボールの横を上から下に向かって擦る必要があります。しかし球速を出すためには前に向かって押し出す必要があるので、スピン量を上げるための力の伝わり方と、球速を上げるための力の伝わり方に違いが生まれます。これによりボールへ力を伝える際、少しロスが生まれるため、バックスピンストレートよりも球速が出ません。

しかしフォーシームジャイロの減速の小ささはスピン量によってもたらされるものです。またジャイロボールを直球として使うためには、落ちる変化ができるだけ出ないよう、ある程度の球速が必要です。よってジャイロボールの球速とスピン量を確保する事は、ジャイロボールを「使い物になるもの」にする上で非常に重要な問題になります。尚、実際にはそれを狙った場所へ的確にコントロールする技術も必要になる上、それを投げ続けるスタミナやメンタル、更にはそれを1年間続けるコンディション調整なども必要になるでしょう。


ジャイロボールの球速を上げるには

まず重要なのはジャイロボールを投げるまでの投球動作です。軸足に体重を乗せる際には「溜め」が必要であり、その溜めをエネルギーにして、前へ踏み出す際の最初の勢いを生み出します。上げた足は下ろす時に振り子のように使い、そこでは遠心力を生み出します。それらの勢いを上手く使い、前に踏み出す際のスピードをできるだけ高める事が重要です。

続いて前の足を着地させる際には背骨を軸にした回転が行われます。その回転をできるだけスムーズに行うためには、前足が着地した後から回転が始まるのではなく、着地するほんの少しだけ前から回転が始まる必要があり、そのタイミングが重要になります。また背骨を軸にした回転の途中では、腕の骨を軸にした回転が始まっていなければなりません。この腕の骨を軸にした回転は肩のラインが完全にキャッチャー側を向く少し前に始まり、その回転の勢いを元にボールを投げる事になります。そのため背骨を軸にした回転が始まってからボールを持った手が頭の横に来るのではなく、背骨の回転の途中でボールを持っている手が頭の横に来ており、既にボールを投げる準備が整っていなければなりません。その間の「肩から指先までの動作」も、できるだけスムーズに連動させる必要があります。

尚、前方へ踏み出した足が着地した時には、それまで軸足体重だったものが、瞬時に前足へ切り替わります。この重心の移動は、踏み出した前足が着地するその瞬間に、できるだけ素早く行われなければなりません。またその重心の移動が結果として背骨の回転と腕の回転に繋がっていくので、それらの連動もできるだけ無駄なく、素早く行わなければなりません。それが速いほど、球速は上がります。

また背骨を軸にした回転には、途中から股関節を軸にして体を前へ倒す縦の回転も加わります。これによってボールに更に体重が乗り、更に球速が上がります。また腕の骨を軸にしたスピンが行われる前には、胸が張られて胸の筋肉が伸ばされ、肩甲骨が背骨に寄り、背中の筋肉が収縮します。これがボールをリリースする前後では逆に胸の筋肉が収縮し、背中の筋肉が伸ばされ、肩甲骨が背骨から離れます。その時の勢いもボールに伝わるため、それらの筋肉の伸び縮みも前述したスピンと連動させ、できるだけスムーズでなければなりません。

続いてボールをリリースする際ですが、この時には腕の裏側にある上腕三頭筋ができるだけスムーズに収縮する必要があります。特に筋肉は勢い良く伸ばされた時、反射的に縮む性質を持っています。つまり上腕三頭筋が収縮する前には、実は一旦上腕三頭筋が勢い良く伸ばされる必要があり、それが前述した腕の骨を軸にした回転の途中で行われなければならず、その連動も重要になります。ちなみに肘を曲げる角度は必要最低限だけです。深く曲げると伸ばすまでのラグが生まれ、球速が逆に遅くなる事があります。

また無理に球速を上げようとしたり、スピン量を上げようとすると、どうしても前腕が強張ります。必要以上の意識的な収縮は各動作の連動の妨げになるため、前腕には力を入れながらも、リリースする瞬間にはある程度は柔軟に使う必要があります(指や手首はリリースの前に少しだけ反られ、リリースする瞬間には戻り、その勢いもボールに伝わる。硬直するとそれができず、逆に指や手首を反り過ぎたり、柔らか過ぎると勢いが吸収されてしまう)。更に、指先及び指の側面の皮膚も、ある程度柔軟でなければなりません。ボールに最後の最後まで粘りついて回転をかけるような皮膚の柔らかさが必要になるでしょう(加齢、乾燥、マメなどのケアも必要)。

そして前述したように、ジャイロ回転をかける際のリリースでは、上投げの場合、ボールの横を上から下へ擦るようにして回転をかける必要があります。しかしただ単にボールの横を擦るだけだと、前方への伝える力が下へと逃げてしまうので、できるだけバックスピンストレートに近づけるように、前に向かって押し出す(ボールの横を上から抑え込むような感じ)必要があります。しかし球速を上げようとして押し出す事を意識しすぎると、地面に叩きつけるようなボールになったり、コントロールができなくなってしまいます。前述のように前腕はある程度柔軟に使うようにしましょう。また決してスピン量を上げようとして無理に前腕や肩を捻ってはいけません。確かに手の甲を体の外へ向け、リリースする時に逆に体側に向けて意識的に捻る事でスピン量は増えますが、それだと肘や肩に大きな負担がかかります。リリースする寸前まではできるだけバックスピンストレートと同じで、リリースするその瞬間に前腕の向きが少しだけ変わるというようなイメージです。


ピッチャーとしての基本的な能力が必要

前述のジャイロボールの球速を上げるためのポイントは基本的に「上から投げる投法」を例にしたものです。そのように上投げではボールの横を上から下へ向かって擦る必要があり、前方へ伝える力がどうしても逃げてしまいます。おそらくバックスピンストレートでは160km/h出せたとしても、純粋な回転のジャイロボールでは出せても140km/h台に留まるでしょう(マリアノ・リベラ投手のように、回転軸がずれれば150km/hは出るかもしれないが、あれを意図的に安定して投げ、制御するのはかなり難しい)。しかしサイドスローやアンダースローでは、腕を横から横へ、あるいは横から上へ振ってボールに回転をかける事ができるので、スピン量を維持しながら、かつ球速のロスを抑える事ができます。尚、各動作の連動は基本的には同じです。背骨を軸にした回転や腕の骨を軸にした回転など、それぞれを上手く連動させる事が球速を出す鍵です。

ちなみにジャイロボールではリリースポイントが低くなるほど落ちる変化を抑える事ができます。特にフォーシームジャイロとツーシームジャイロの特性を活かすには、両者ができるだけ同じような球速・軌道である必要があるため、その意味ではできるだけリリースポイントの低いアンダースローが適しています。しかしリリースポイントが低くなるほど「体重を乗せる」事は難しくなります。このため例え各動作の連動が上手く行ったとしても、アンダースローではせいぜい140km/h前後が限界でしょう。もちろんアンダースローでそれだけの球速が出れば大きな武器になりますが、プロでも140km/hを安定して出す事ができるアンダースローのピッチャーは殆ど存在しません。おそらく球速こそ、元々少ないアンダースローのピッチャーがプロで安定して活躍するための最低条件になっている可能性があり、これはジャイロボールを投げない場合も同じです。

一方、ジャイロボールを投げるために必要な事は球速やスピン量だけではありません。コントロール、メンタル、スタミナ、投球術(攻め方)、守備など「ピッチャーとしての基本的な能力」は、そもそもジャイロボールを投げなくても必要なものです。ジャイロボールを投げる事ができ、球速がある程度あったとしても、それ以外の能力が低ければ何の意味もありません。ジャイロボールを投げる事に集中するあまり、それらの練習を怠らないようにしましょう。




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