アンダースローならジャイロボールの落ちる変化を無視できる?

ジャイロボールでは上向きの力が働かないので、基本的には重力によって落ちるボールになります。しかもリリースポイントが高いほど重力の影響を受けるので、高い位置から投げる投法では落ちる変化球にしかなりません。しかしアンダースローのように低い位置からリリースできれば、重力による影響を受けづらくなり、直球として利用する事ができます。ここではそれについて私なりにまとめています。ご興味のある方は下記「続きを読む」よりどうぞ。
(記事作成日時:2012-10-02、更新日時:2019-03-19)

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ジャイロボールはアンダースローが適していると思われる

落ちる変化を無視するためには、バックスピンストレートのように上向きの力が働く必要がありますが、ジャイロボールには基本的に上向きの力が働かず、重力の影響によって落下してしまいます。つまり、オーバースローなど上から投げるような投法では、仮にジャイロボールを投げる事ができても、球速が遅ければ放物線のような軌道、速くても縦のスライダーのような軌道にしかなりません。リリースポイントが高くなるほどその落差は大きくなるでしょう。

この重力による下方向への変化を抑え、ジャイロボールをできるだけ直球として利用するためには、可能な限りリリースポイントを下げ、上向きの力を自らで加える必要があります。何故直球として利用する必要があるのかというと、これはフォーシームジャイロの特徴である「初速と終速の差が小さい」事を利用する事でのみ、ツーシームジャイロの持つ「減速」を利用する事ができるからで、これによりストレートとチェンジアップのような使い方ができると考えています。

特にアンダースローでは、どのような球種を投げても、ボールの軌道は下から上方向になります。球速の遅いボールでは山なりになってしまいますが、ある程度の球速を確保できれば、ジャイロボールでも直線的な軌道に近づける事ができます。これによってフォーシームジャイロとツーシームジャイロの特性を最大限活かす事ができます。すなわちジャイロボールを投げるために最も適しているのは「アンダースロー」だと私は考えています。


上から投げるジャイロボールの使い道

もちろんオーバースローなどの上投げでも、ジャイロボールを「直球」のような使い方をする事は一応可能です。ただし、そのためには160km/h以上という球速が必要になります。何故ならジャイロボールは重力の影響を受けやすく、そのままだと落ちる変化球になってしまうからです。そのため落ちる変化が出る前にキャッチャーミットへ到達させるような球速が必要なのです。

またバックスピンストレートと比べてみると、バックスピンストレートはボールの正面から前に向かってリリースするので、力を最も効率良く伝える事ができる球種です。だからこそ球速が出るのですが、それでも日本人投手では、出せても160km/h前後が限界であり、メジャーリーグでも160km/hを超す投手は限られています。

一方、ジャイロボールを投げるためにはいわゆる「ジャイロリリース」と呼ばれるような、バックスピンストレートとは異なる特殊なリリースをしなければなりません。具体的にはボールの正面ではなく、正面からやや横を、上から下あるいは斜め下に向かって回転をかける必要があるので、その分、前方向への力は失われてしまいます。つまりジャイロボールはバックスピンストレートよりも球速を出すのが難しいため、おそらく投げる事ができても140km/h後半しか出ないと思われます。このため直球として使うのは難しいでしょう。

ただし使い物になるかは別として、落ちる変化球として使うのであれば、投げる事自体は誰にでも可能です。他の記事でも説明していますが、変化球として利用する場合、純粋なジャイロ回転である必要はないので、回転軸を傾けて、自分が投げやすいように投げれば良いと思います。特にバックスピンとジャイロスピンの中間、サイドスピンとジャイロスピンの中間は、練習すれば投げる事自体はそう難しくありません。問題なのはその回転を、フォーシームジャイロで投げたり、ツーシームジャイロで投げる場合で、これは指先の感覚的な問題になるので、結構センスが必要です。


ジャイロボールの球速をどのようにして確保するか問題

前述のようにアンダースローであれば普通に投げても浮き上がるような軌道を描きます。このためある程度球速を落としても「直球」として扱う事ができます。例えば牧田和久選手は最速137km/hのストレートを投げますが、彼は通常のアンダースローよりも低い位置でリリースしています。実はそうしてリリース位置が低くなればなるほどジャイロボールは投げやすくなります。特に彼はストレートが少しジャイロ回転していますので参考になります。

また球速が出るアンダースローのピッチャーと言えば、かの山田久志投手は140km/hを超える球速だったと言われています。彼の場合はリリースポイントが少し高いので、ジャイロボールの落ちる変化を無視するにはおそらく適しませんが、彼はプロでも最高のアンダースローピッチャーと言われています。球速を上げるためのフォーム、投球術などは参考にできる部分も多い事でしょう。

尚、私の考えではアンダースローでジャイロボールを投げる場合、球速は最低でも140km/hは必要と考えています。まずジャイロボールを投げる投げない以前に、これがかなり難しいです。現在プロで活躍しているアンダースローの投手で、牧田和久投手や渡辺俊介投手のようなリリースポイントの低い投法で、かつ140km/hを超すような球速を有している選手はかなり希少な存在です。そもそもアンダースローのピッチャー自体の人口が少なく、その限られた世界の中では140km/hを出す事自体、相当難しい事なのです。

また現在のアンダースローのピッチャーの扱いとしては、「変速投手」として、及びワンポイントリリーフとして扱われる事が多いため、球速を上げる事よりも制球力や変化量などを求められる事が多いという事も、おそらく関係していると思います。更に元々の人口が少ない事で、開拓者や専門家がおらず、野球をする子どもは十分な指導を受けられないという事も関係していると思います。その辺を改善しない限り、例え投げる事ができるようになったとしてもプロで活躍する事は難しいでしょう。

ちなみにフォーシームジャイロの減速が少ない特性と、ツーシームジャイロの減速が大きい特性を活かすためには、フォーシームジャイロのスピン量も重要になります。前述のように上から投げる場合、リリースの関係上、ジャイロボールは回転量と球速を両立させる事が難しく、球速を出そうとしてスピン量を減らしてしまうと、せっかくのフォーシームジャイロの特性が失われてしまいます。フォーシームジャイロの特性が失われれば、ツーシームジャイロも投げる意味がなくなります。

しかしアンダースローであれば、ナチュラルに近い形でジャイロ回転のボールを投げる事ができるので、球速とスピン量を維持したフォーシームジャイロを投げる事ができると思います。一方、ツーシームジャイロは全力のフォーシームジャイロとできるだけ近い球速・近い軌道で投げる必要があり、実はこれが難しいのです。それが難しい場合、敢えてフォーシームジャイロの球速を落とし、ツーシームジャイロを強めに投げる事で、同じような軌道で投げる事もできますが、その場合、今度はフォーシームジャイロの力加減が難しく、練習が必要になります。



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